リアリズムとファンタジーの狭間で非リア充青年になりきった吉沢亮の雰囲気と演技が物語を牽引。サンタも橋本環奈も世の中も多分、裏側はみんな「普通」で「意外」なんじゃない?
サンタクロースの舞台裏はブラック?
「リア充ども滅べ」とでも叫びたくなる聖夜をしがないコンビニバイトで過ごす真面目でいいやつだけど人生好転しない非モテ男・日野三春(吉沢亮)は、家の近所で拉致され、目が覚めたらそこはとある場所にあるサンタクロースの拠点だったからさあ大変。
子どもに夢を届けるサンタクロースというやつは、まるで東京で揉まれるバイト青年かスパルタ上司にこき使われるブラック企業の社員?。どうやら「サンタさんシステム」もそんな苦労に支えられているらしい。
「子どもが欲しい物」って一体どうやって知って、作って、届けるんだ?。CIAもびっくりな個人情報を勝手に収集分析したり、ブラックな(!)過重労働を経て、夜の闇に紛れて家に忍び込まなければいけない。おっと、ここはオートロックだ。
悪い子たちにはプレゼントで「がっかり」させるんだ。しかも、的確にだぞ。
〈舞浜にあるリア充の楽園〉でお馴染みのあの小動物がヒッチコック『鳥』ばりの大群で襲いかかってくるけれど、決して「リア充対反リア充」みたいに単純な構図では描かないから安心しろ。
使命を果たそうと行動する中で、自分にとって本当に欲しいものってなんだろう。
人にとっての幸せってなんだろう。大人になるってきっとそういうことなんだろうなあ。示唆に富んだ“青年向け寓話”といった感じで原作の深みがなんとなく見える気がした。
予想のさらに上行く環奈志乃の意外性キャラ
真っ黒制服だらけのサンタ“社員”たちの中で一際目立つピンク髪の美女・北条志乃ちゃんは、まさに紅一点。嫌な職場だと思っていたけどかわいい子がいるぜ嬉しい。そんな非モテ男の喜び対象を橋本環奈ちゃんが体現。もうJK役じゃないかんな。
志乃の部屋にこっそり入ってみれば「女の子の香り」がして思わずベッドを嗅いじゃう三春くん。ぼっち男の習性がなんだか哀しいぞ。
仕事(っていうか盗撮だ)している時の志乃ちゃんの強烈な変顔にびっくりしてたら、オフの姿はまさかの寂聴。予想の斜め上を行く〈リアル環奈ちゃんが一度やってみたかった格好〉には三春くんだけじゃなくて観ているこっちも仰天。こういう役を喜んでやる環奈ちゃん嫌いじゃないぞ。
カイザー役の中川が良い
田中カイザー役の中川大志が良い。頭悪そうで調子いい野郎にいい味出ていて、次第に愛着湧いてくる憎めないキャラをイキイキとやっている。推しの彼氏を褒めるのもなんだが、まあそういうことね。
まとめ・評価点数
独創的かつシュール。突き付けられるリアリズムとファンタジーの狭間で非リア充青年になりきった吉沢亮の雰囲気と演技が物語を牽引し、2時間観客を座らせているのではないか。
裏を返せば、設定の割には一つ一つの展開が地味に感じられるし、全体としてもそつなくまとまっているので身も蓋もない言い方をすると「感想=普通」。人に勧められる要素を言語化しづらい作品ではあるなあ。
【3.5】
何%かの観客に嫌われるのを覚悟であと一歩突き抜けても良かったのかもなあ
2022年12月23日(21時50分の回)、映画館で鑑賞(客数5名)。
作品データ・視聴情報
ブラックナイトパレード | |
---|---|
種別 | 映画 |
製作国・公開年 | 日本 2022年 |
年齢制限(日本) | G(なし) |
出演 | 吉沢亮/橋本環奈/中川大志/渡邊圭祐/佐藤二朗/ムロツヨシ/玉木宏 |
監督 | 福田雄一 |