かんな座

“俳優橋本環奈”と映画・ドラマの味わい方

劇場版ルパンの娘 - “夢中にさせる魔法”がテレビより弱い

劇場版ルパンの娘
劇場版ルパンの娘

華麗な泥棒×王道悲劇×悪人成敗―。エンタメのワクワクをこれでもかと詰め込んだ深田恭子主演テレビドラマの映画版は何かが足りない!。橋本環奈はフロ要員?。

イントロ

物語の舞台となるのは、シリーズ初となる海外!ついに泥棒引退を決意した華の父・尊は、やっと普通の生活に戻れると喜ぶ華に新婚旅行をプレゼント。華は和馬と杏と3人でディーベンブルク王国を訪れるが、それは“Lの一族”と“三雲華”にとって史上最大の危機の始まりとなるのだった――。

泥棒一家に隠された“もう一人のLの一族”三雲玲の存在。 劇場版最大の謎、尊が明かす「華が盗まれた娘」の意味。祖父を殺され、復讐に燃える探偵・北条美雲がついに辿り着いた真実。

新たな敵となる“JOKER”がLの一族の前に立ちはだかる。
(公式サイトより抜粋)

唐突展開に置いてけぼり? 得意のはずコメディ要素も噛み合わず

深田恭子)たちの旅行先「ディーベンブルク王国」で早速事件に巻き込まれるんだけど、テレビゲームのように「はいどうぞ」といわんばかりに用意された冒険必須の状況設定で序盤から激しいアクションだから唐突感が先に立ってしまい、どうしても緊迫を感じない。ちょっと置いてけぼりにされる。

「あれ、どうだっけ」と連続テレビドラマ版を思い出す暇もなく、初心者にはこの独特な世界に入り込む余地も与えられないまま『ルパンの娘』流のご都合主義を受け入れるには少々無理があるのだ。

ストーリーもテレビ版の最終回的位置づけだけにいきなりクライマックス。

泥棒が悠々と日常空間にいる滑稽さもそこそこにや悪人を懲らしめる爽快感とか敵を出し抜くワクワク感もないまま結末へ向けて進むものだから、テレビ版未見の人にこの世界の味わいが伝わるかなと心配。

それにコミカル描写はだいたい滑るのが痛い。

“泥棒に関する世界的なイベント”もその名前を出すだけでおかしいはずなのに見事に滑ってしまっている。「祝泥棒引退パーティ」は“らしく”ていいけどね。

冷凍のくだりはあまりにズルすぎる展開。円城寺(大貫勇輔)の突然ミュージカルは突飛ながらテレビ版ではもう少し丁寧に前後をつないでいたが、ここは不自然がすぎてただの荒唐無稽でギャグにすらなっていない。

本シリーズはそもそも現実離れをわかって楽しむ大人のおとぎ話。

個性的なキャラと世界観に馴染めるかという点でテレビ版ではじっくり魔法にかけられてきた。

Lファミリーが出陣する際にあやしげなダンスを踊る“変身シーン”にしても最初は「なんだこれ」とあっけにとられるが、毎回繰り返し観せられることで不思議とくせになり、「よっ、待ってました」と言いたくなるお約束になってくるんだよね。

2時間弱一本勝負の映画だとそれが難しいかな。

橋本環奈が黒ストで誘惑

復讐ドラマも今回決着を迎える美雲役の橋本環奈。かなり珍しい黒ストッキング姿。

環奈の自然な演技の安定感に言うことなし。『警視庁いきもの係』(2017年、フジ系)を配信で見返していた後だけに余計に感じてしまった。

脇役感だけが残念。

序盤で媚薬かけられて「一緒にお風呂入りまひょか」って栗原類)を誘惑しまくる場面があるんだけど、これはステレオタイプなエロ女というコメディリリーフ的役回りだから、逆にエロくないんだよ。

だけど長いぞ。扱いがいいんだか悪いんだか。

時空を超えたロミジュリ悲劇はらしさ追求の最終地点

映画版としての流れはどうなっているかというと「もう一人のL」との最終対決なんだけど、『ロミオとジュリエット』的悲劇というお涙展開に結構比重を置いている。

まさかの時空を超えた展開が切なく描かれるのは、実に『ルパンの娘』らしさを追求していていいよね。シリーズのすべてをひっくるめた壮大な伏線回収劇は悪くない。

一方で敵がどこにいるのかといったことやLがなすべきことはわかりきっているし、もっといえば華は誰の子かという謎も途中で読めてしまうし、謎解きやサスペンス要素はないに等しい。

うーん、テレビ版の“エンタメなんでも詰め合わせ弁当”の食べごたえはどこへやら。

ただ、ラスボス対決は一捻り効いており、テレビ版ファンにはまあまあ楽しめるかなあ。

【3.0】茶番なのに不思議と引き込まれるマジックがテレビ版より弱い

作品データ・視聴情報

劇場版 ルパンの娘
種別 映画
製作国・公開年 日本 2021年
年齢制限(日本) G(なし)
出演 深田恭子瀬戸康史/橋本環奈/小沢真珠栗原類/どんぐり/観月ありさ渡部篤郎
監督 武内英樹
現在観る方法 配信、Blu-ray、DVD