リアルJK当時の透明感が堪能できる橋本環奈主演二作目。しっくりくる天真爛漫でS女なキャラ。恋愛物語を匂わせる予告編はミスリード。“弱酸性”な青春ストーリーは今観ると特徴がない?。
- 淡い、淡すぎる。 「ラブストーリー」はミスリード
- 環奈の透明感は目の保養 しっくりくる天真爛漫チカ役
- 出演者の楽器演奏に驚き 文化系正統青春ストーリー
- 低刺激な“弱酸性” 今観ると特徴なく感じる
- 作品データ・視聴情報
淡い、淡すぎる。 「ラブストーリー」はミスリード
恋愛物語っぽいけどそうじゃない。予告編を観ると本編よりトクベツ。
幼馴染で友達以上の関係はあって淡い接近はあるけど、恋愛もどきは95%描かれない。
「吹キュン純愛ストーリー」というコピーに代表されるようにギリギリ虚報を避けているけど印象操作も甚だしい。
「吹奏楽」なんだよ。諦めかけた音楽をみんなで一緒にがんばる。それに幼馴染の微妙な関係の後押しが付くといった程度だ。
年齢の問題じゃない。他のカップルキャラの描き方見ても主役2人の「恋愛」は不自然なほど淡いし、淡すぎるのだ。
彼らの心の中では進んでるんですって言われても無理だよ。これで恋愛もどきならAV女優は毎回妊娠していないとおかしいレベルだ。
「響き出す、2人の青春。」…いや9人以上いるし。
環奈の透明感は目の保養 しっくりくる天真爛漫チカ役
若い!。ダッシュシーンが爽快。まだ身体が軽い(笑)。
この頃すでにファンだったから大体知っているはずなのに今観てそういう印象抱いた。比べるとよくわかるもんだね。
美しいストレート黒髪。薄化粧でゆで卵みたいなプリプリとした白い肌と褐色の瞳に見惚れてしまう。
Sっ気と懸命さを併せ持つチカこと穂村千夏に存分になりきっている撮影当時17歳の橋本環奈。リアルJK最後の映画だ。
天真爛漫で活発な役。屈託ない笑顔がいいなあ。見えそうなくらい制服で飛び跳ねるから思わずスロー再生しちゃったよ。
それでいて幼馴染のハルタこと上条春太(佐藤勝利)に対してはS女炸裂で何かにつけて軽くボコる微笑ましさ。さりげなくM男歓喜、S女体験の視聴者サービス感。
ジャニーズの美形若手に遠慮がない。それでいて嫌味もない。アンチ少ない美女の原点がここにあった。勝利くんのMな受け身のうまさもあるけど、“環奈らしさ”がよく出ているぞ。
『セーラー服と機関銃 -卒業-』(2016年)から1年。よりレベルアップした表情の演技とセリフ。微妙な表情の変化と間がいい。泣きじゃくるシーンもわざとらしくない。
「高校生」が板に付いている。もちろん今のほうがうまいけど、当時の環奈本人のノリを活かしつつチカの一所懸命さ、実直さや悔しさなど決して漫画的なキャラではない普通の役としてきちんと内面を表現しているのだ。
抜群に美少女だけど学校社会で浮いていなくて溶け込んでいるから観ていて頼もしいぞ。
出演者の楽器演奏に驚き 文化系正統青春ストーリー
ストーリーとしては一度は廃部決定したわけあり吹奏楽部を新入生チカが前向きに(強引に)再建していこうとする話。明るい伊東富士子感。
辞めた元部員どころか荒れた野球部崩れまで次々と押さえ込む無邪気で積極的なチカ。実は何一つ楽器が弾けなかった。フルートをやるけど真顔で音外しする様がコント並み。
なぜわけありなのか。どうして辞めた部員が多いのか。そんな謎もハルタの推理などにより徐々に解明していき、仲間割れや演奏技術の壁などにぶつかりながら部員みんなでコンクール目指していく文化系青春。
チカは通学途中のバスとか自宅でミニFMを聴く趣味があるんだけど、微弱電波はそんなに飛ばねえぞってツッコミはwebでサイマル配信しているってことにしてやめておこう。
楽器できないチカも含めて音楽の力を実感している部員たちは、元部員を呼び戻すのも音楽だと確信している。なんか『フラガール』感。
それで文化部とはいうもののコンクール目指せばシビアな競争の世界。できるやつほど自負心が強い。なかなか上達できないチカ。個々のレベルの違いという集団芸術ゆえの難しさも重なっての仲違い。
起こる波乱で落ち込むし、幼馴染や仲間に励まされるチカ。
そんな正統派青春成長ストーリーを吹奏楽に重ねて描いている。 出演者は役を演じながらある人は経験者として、ある人は初心者としての立ち位置で演奏をやってのける。
「前田航基ってもともとトランペットできたんだっけ?」。堂々とした演奏ぶりに驚いちゃう奇跡。役のために習得したんだったら結構すごいわ。
環奈のチカは下手だった楽器が徐々に演奏できるようになってくる。役とはいえ『シャル・ウィ・ダンス』感に拍手贈っていい。
本気で怒ってんじゃね?とすら思わせる恒松祐里の眉間の動きが超絶リアルな怒り顔が怖いよ。環奈専用ヒール役(違う)乙。
低刺激な“弱酸性” 今観ると特徴なく感じる
テーマ性とドラマがちょっと弱い。いろいろ人間の事情は描かれるけど強く迫るものはない。
時間が止まったような躍動感のない映像が多く、今ひとつ盛り上がらない展開。
“静寂”と“喧騒”のコントラストはバンドの音を際立たせるという意味で好意的に見ることはできなくもないが、ダメな時代の日本映画(1990年代)みたいな雰囲気にもうちょっと刺激がほしいなと思うのが正直なところ。
竹中直人『119』(1994年)のような静寂の連続が苦手な筆者には余計そう感じる。まあ深夜に観たからご近所騒音対策にはなったけど。
音楽を題材としたソフトなキャラクタードラマにとどまっている。あの人の演奏はすごいといわれても説得力がないんだよね。映画作品として思わず引き込まれるような凄みがないというか。演じる役者がこのためだけに楽器演奏を身に着けたのならそれはすごいと思うけど。
「へーそうなんだ」と思わず唸るような吹奏楽知識の伝授があるかといえばそっちも弱い。
難しくしすぎるとお客が逃げちゃうからかなあ。
結局環奈を見せることに主眼を置いた作品の域を出ていない。まあ時期的に当然。必要以上に“出演者萌え”でないことは良心的といえるが。
淡くて淡すぎるのに恋愛推しで宣伝していたことからも考えてみると、『セーラー服』を受け付けなかった層向けか。
当時はまだまだ“かわいいかんなちゃん像”を抱いている人が多かったはずだから、清純アイドルイメージを存分に押し出したコンテンツのニーズに応えたんだなあと思った。
完成度優先の低刺激。説得力はともかく話としては一応まとまっているし、演技も良い。嫌な気はしない。
だが、いろいろな作品世界で様々な役になりきれる今の環奈を知っているとこれといって特徴がない作品に感じる。
【3.5】
作品データ・視聴情報
ハルチカ | |
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種別 | 映画 |
製作国・公開年 | 日本 2017年 |
年齢制限(日本) | G(なし) |
出演 | 佐藤勝利(Sexy Zone)、橋本環奈、恒松祐里、清水尋也、前田航基、平岡拓真、上白石萌歌 |
監督 | 市井昌秀 |
現在観る方法 | DVD等 |