山崎賢人主演の中国歴史アクションを遅ればせながら観てみると…。圧倒的スケールと迫力の戦闘シーン、起伏に富んだストーリー展開で思わず興奮?。橋本環奈の役どころは?。
- 苦手なはずが…映像スケールに圧倒される
- あらすじ
- クライマックスに興奮 テンポ良い展開
- 素早く剣と剣がぶつかり合う殺陣の迫力
- 山の民の王を見て思う 勝手に長澤まさみ論
- 不思議なキャラを演じる橋本環奈
- 少年漫画方程式だけど…バランス良い歴史アクション劇
- 作品データ・視聴情報
苦手なはずが…映像スケールに圧倒される
もう3年か。少年漫画的スペクタクル×アドベンチャー×バトルの世界観が苦手で映画館公開時はPR目的の番組を観るだけに済ませて後回しにしていた。
その翌年日テレ系で放送された回を録画したのはいいが、これもまた未見のままレコーダに温存。続編公開が決定した今、“環客”としてまずいだろ。どんだけ観ず嫌いなんだ?と自分にツッコミながら再生ボタンを押してみた。
最初っから映像的スケールが並の作品とは段違い。古代中国を再現したリアルな民家とその村の背景に映る広大な草原風景。後半に出てくる山の民のいる世界なんて山水画のような厳かな美しさ。
8万軍勢の隊列のバカでかさ。見渡す限りを埋め尽くす桁違いな数の兵士たちは壮観としかいいようがない。舞台装置として申し分ない画が物語に説得力を与えている。
『新解釈・三國志』の後に観たから余計にそう感じるのかもしれないが。
あらすじ
どんなあらすじかといえば、紀元前245年の春秋戦国時代。7つの国に分かれていた中華の西方にある国「秦」。いつかは大将軍になってやるぞと無謀な夢を見て我流で剣術を磨く血気盛んな戦争孤児・信(山崎賢人)は、先を越された形で王宮に雇われていた同志・漂(吉沢亮)の死に直面し、「俺を天下に連れてってくれ」の遺言を胸に一人村を飛び出して突っ走る。
たどり着いた先にいたのは漂と瓜二つな秦王・贏政(吉沢亮:二役)だった。
異母弟・成蟜(本郷奏多)によるクーデターで贏政は王宮を追われている。漂はどうやら贏政の影武者させられていたらしい。襲いかかってくる異母弟の刺客、敵か味方か山の民、隠居したはずの大将軍。
いろいろな思惑が絡み合う渦の中に情熱一本の自己流剣士が巻き込まれていく―。
クライマックスに興奮 テンポ良い展開
立場の交錯をうまく組み込み、起伏に富んだストーリー展開は、抜群なテンポでだれることなく、クライマックスのある種“正攻法ゲリラ戦”みたいな奪還劇にワクワクしきり。
裏切り・騙し合いも複雑すぎず、それでいて現実の残酷さもきっちり描いてくる。なんだ普通に面白いじゃないかと気づけば目が離せなくなっていた。
素早く剣と剣がぶつかり合う殺陣の迫力
戦闘シーンの素早く剣と剣がぶつかり合う殺陣の迫力満点。信が村を飛び出して最初に邪魔なやつらを蹴散らす「レベル1」の戦いからそうだから。ワイヤーアクションで異様に高いジャンプもあるけど漫画チックにならない本物感。
戦乱の世に生きる武士たちの荒々しさの演出、山崎賢人演じる信の闘志むき出しキャラと役作りの成果としての素早い動きが噛み合っているからだと思う。
最終戦闘の臨場感たるや大河ドラマとか日本時代劇の比じゃない。ありがちな実写化映画だと思って観るといい意味で裏切られること請け合い。
戦の現実感を出しつつグロに走りすぎないさじ加減がうまい。人を斬って血しぶきが飛び散っても生首が登場してもG(年齢制限なし)なのよ。
山の民の王を見て思う 勝手に長澤まさみ論
山の民の王・楊端和を演じる長澤まさみなんだけど、ネットニュースで評判が良かったので期待値が高すぎて「普通にいい」くらいの印象だった。すまん。
容姿はファンタジーRPGのような美しく強いキャラで「掃き溜めに虎」と言った感じで凄みのある二刀流の立ち回りを見せる。
ところで長澤まさみという役者は、本当に「何にでもなれる」感じがすさまじい。楊端和にしか見えない。
この「何にでもなれる」は、橋本環奈や山崎賢人、吉沢亮のそれとは違う。
役によって別人になる。よくカメレオン役者というのがいるけど度合いが違うんだな。
環奈も変幻自在ではあるけど、環奈という確率された雰囲気がある。事務所の大先輩沢口靖子もそう。最近の『科捜研』だけ観て言うわけじゃないよ。各作品で違うキャラを演じているんだけどどこか「沢口靖子」という芯があるでしょ。下手という意味じゃなく。
長澤は役ごとに容姿も雰囲気も何もかも変化しすぎていうなれば“完全に別人”。逆に「どれが本当の長澤まさみなの?」ってわからなくなるほどだ。
声優でたとえれば確固たるカラーのある神谷明でなく山寺宏一。『マスク』(1994年)と『アンパンマン』のチーズじゃ知らなければ同じ喉から発せられた声だと気付けない。その感じだね。
最近も配信で東野圭吾『分身』(2012年、WOWOW)を観たんだけど筆者がもし仮に日本語がわからなければ同じ役者だと気が付かなかったと思う。
不思議なキャラを演じる橋本環奈
橋本環奈が演じるのは河了貂というフクロウをモチーフにしたような蓑を身にまとう少し不思議な人物。
金目当てに信、贏政たちに付いていく。積極的に戦う存在ではないけど偶然手に入れたとある武器を使うとあっさり敵が倒れる運の良さも持っている。
途中で拾った少々口悪いけど憎めない小動物的キャラは、多分ロードムービーには大事な存在だ。
よくわからない感じのキャラを自然にこなしている。
他の出演者もそうだけど役者の特徴をうまく活かした配役に好感持てる。
少年漫画方程式だけど…バランス良い歴史アクション劇
結末まで観ると信のどこまでも血気盛んなキャラもあって青年漫画原作ながら(日本の男子向け)少年漫画の方程式(「友情・努力・勝利」)そのものだなと感じさせられるんだけど、信が一人で敵を倒すようなリアリティのない展開にはせず、軍事的動乱に巻き込まれていき、その無鉄砲さに呆れられたり、時には士気を高めることにもつながる集団内の野生児としてうまく組み込んでいるから許せるのよ。
吉沢亮の重みのある表情も物語を嘘くさくなくしているよね。それをいえば山崎賢人の演技もそう。贏政とは対照的に怒りの感情むき出しで今にも瞬間的に斬りかかってきそうな手に負えない感じがすごい。
演出・ストーリー・アクション。どれもバランス良く、普通に大作映画としての基準を満たす時代アクション劇としてよくまとまっていて見応えある。観る人の年齢や嗜好を問わない感じだね。
【4.0】観ず嫌い乗り越えて正解
作品データ・視聴情報
キングダム | |
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種別 | 映画 |
製作国・公開年 | 日本 2019年 |
年齢制限(日本) | G(なし) |
出演 | 山崎賢人/吉沢亮/長澤まさみ/橋本環奈/本郷奏多/高嶋政宏/要潤/大沢たかお |
監督 | 佐藤信介 |
現在観る方法 |
Blu-ray、DVD、配信 |