かんな座

“俳優橋本環奈”と映画・ドラマの味わい方

ネメシス - 今頃配信で一気に観たら意外なことがわかった件

ネメシス
ネメシス

広瀬すずが演じるいきいきとしたアンナの魅力。櫻井翔とダブル主演の探偵ドラマの出来は髪型なんかでわかるのか?。配信一気観してわかった本当のところと橋本環奈が呼ばれたとても書きづらい理由とは?。

主役として作品引っ張る力がない櫻井

ダブル主演の片方、探偵事務所ネメシスの探偵・風真尚希を演じる櫻井翔の主役としての画的な弱さ。

容姿と醸し出す雰囲気に物語を牽引するだけの力がないんだよね。広瀬すず江口洋介と同じ画面の中で比べれば一目瞭然。

単独主演には無理があるから若手トップすずと連ドラベテラン江口のエネルギーをもらって、その上すず、江口の探偵風真を支える役回りによってどうにか主演が成立しているような感じ。

役としても風真は新米ポンコツ探偵で天才助手・美神アンナみかみ・あんな広瀬すず)と社長・栗田一秋江口洋介)がいないと探偵として成り立たない設定がなんとも皮肉。

ダメキャラならダメキャラでいいから感情移入できたり味わいがあればいいんだけどそんなことはなく、今ひとつ魅力に乏しいまま最後まで。演技はうまいんだけど。

単話と小出しで終盤の山場まで持つか?

全10話のうち第1話から第6話まではほぼ一話完結ミステリだが、シリーズ全体を貫く謎としてアンナの父・美神始仲村トオル)の失踪を含むネメシスが本当に解明したい事件(以下、大事件とする)というのがある。

最大の見せ場となるこの大事件は、序盤からシリアスな回想シーンを小出しにしてきて終盤の山場につなげるんだけど、いかんせん遅い。ドラマが進み出すのは第7話からだ。

序盤の一話完結回で手に汗握るような山場がなく、大事件に関する謎の小出しも「交通事故」「赤ん坊の秘密」「血まみれの妊婦」…。

この謎は一体なんなの?って次が気になるっていうほどには興味をそそられない内容だから、大事件の本丸に到達する前に途中離脱を生んじゃいそう。

初っ端第1話の事件が痴情のもつれじゃあこのドラマすげえなって思えるわけないんで本筋に絡まなくてもいいから序盤にも山場作るべきだったと思う。

じゃあ大事件部分だけ=第7話から観ればいいかというとそれも難しい。各話に伏線散りばめまくりなんで途中から観るとわけわかんないところが出てくるので困っちゃう。

ハマる味にはもうひとつ足りない

活発で風変わりな天才助手・アンナ
探偵事務所ネメシスのレトロな調度品や雰囲気
いかにも往年の探偵ドラマ風探偵な栗田

作品ならではの匂いはあるけどこの世界にハマらせる力がなんか弱い。色々奇抜な具材は入っているのに全体としてはパンチの効きがもう一歩。

黄緑色のバンズにザリガニがまるごと挟まっている「ザリガニパクチーバーガー」にPETボトル飲料の「イカ墨水」(それって墨汁じゃん!)といった奇抜な料理・飲み物とか『こち亀』本田くんよろしく運転すると極端に性格変わる医者とかいろいろコメディ要素をぶち込んでくる。

それらが噛み合っているかはさておき、『あぶない刑事』タカとユージのパロディだけは本当に中途半端で余計。個性的というよりおふざけなので作品を軽くしてしまっている。

広瀬すずが演じるいきいきとしたアンナの魅力

すずが演じるアンナ。その自由闊達なキャラが一貫していていいのよ。身体の動き、表情、言葉でのやりとり。すずによってアンナがいきいきと表現されていた。

名探偵コナン』みたいな遠隔推理ショーを始める時の「大丈夫ですっ」に代表されるようなセリフ回しがキャラと状況に合っていて不自然さがなく、キャラをリアルにしている。

「私、入ります」。ヨガみたいな武術カラリパヤットゥのポーズでタイムスリップ(?)して事件を整理する超人的な設定には独創的すぎて驚くけど、そういう荒唐無稽なことを含めて魅せてしまう力がすずにはあるような気がする。

アクションシーンの軽やかな身のこなしは観ていて爽快。伊達に鍛錬積んでねえなと思うよ。

能あるすずは髪ごときで隠せない。

ミステリとして普通に楽しめる序中盤 スリリングな終盤

序盤中盤はいろいろ味付けされているがミステリとしての筋書きは意外とオーソドックスで普通に楽しめる。他の推理ドラマに移しても成立しそうなくらいだ。

第7話以降は大事件本筋展開に“遅出し”感はあるが、「あれ?今まではなんだったの?」と思うくらいスリリングで盛り上がる。

印象に残った回を選ぶと第2話と第7話。

第2話日本語ラップの回。ひねりの効いたミステリと人間ドラマ、フリースタイルラップ、アクションが絶妙に絡み合って独創的なショーになっている。

第7話は大事件絡みで急展開。賭場やスリのテクニックまで利用したダーティな攻防に目が離せない。

大事件の真相はいかに。科学に関するやばい事柄や始とすずの秘密、大事件の黒幕の正体、そして対決。

忘れちゃいけない橋本環奈は一体何のため本作に呼ばれたのか。終盤は作品のコミカル設定と噛み合わないくらいのシリアス増しで結末に向けて駆け抜けるぞ。

全部観るのに時間はかかるけど〈全10話で約8時間40分〉シリーズ全体でみると悪くない。観てもいいと思っている人には観て損はないぞと言っておきたい。

3.5】ネットニュースの評価は当てにならない

橋本環奈はどうだった?【半ネタバレ】

※本作は半ネタバレしないとレビューできないのでご容赦いただきたい。

【半ネタバレここから】

橋本環奈は第3話で初登場する数学に強い大学生・四葉朋美を演じる。遊園地で偶然出会い、爆弾事件の解決に貢献をして以来、アンナの唯一の親友として中盤まで大物ちょい役出演(※第5話出演なし)…と思いきや終盤第8話で真の役回りが、つまり環奈が本作に呼ばれた本当の理由が判明。

芸能マスコミが作り上げた「すずVS環奈」アングルをなぞるような展開が刺激的でやらしい。美しい笑顔で相手をなぶるんだぜ。

本性をあらわにした朋美の目が高貴で冷酷な女王様そのもの。ここ数年シリアスものも増えているけど、本気の悪女は初めてだよね。美しい悪役という環奈にぴったりなポジションの一つに着地し始めたか。

第10話の13分49秒あたり(特別版)なんてすこぶる悪い目しているなあ。朋美の複雑な心境の微妙な違いを顔で表すのが本当にうまい。

朋美と対峙している時の始役仲村トオルの凄み。窮地でなお正義を貫こうとする今のトオルの枯れ演技がね、それに環奈が負けていると言いたいんじゃなくてそういうベテランとタメ張れるレベルになっていることにいい意味で“危険領域”に入ったかと思わずかしこまっちゃうよ。

ただ、シビアな観察をさせてもらうとセリフ回しの品質に若干だがばらつきが感じられる。表情の演技に比べてセリフ回しが若干劣る環奈の弱点がわずかに見えて惜しい。あえて「すずVS環奈」に当てはめて言えば環奈減点で僅差負けってことになっちゃう。

連続ドラマのカットつなぎ〈秒レベルの場面のつなぎ合わせ+撮影順が前後することさえある〉では、役特有の雰囲気を保ちながら状況に応じた演技をするのは普通に難しい。

器用な職人役者(一般人の犯人役など)はある程度パターン化した演技をする(ように見える)。これだと完成度は上がるけどオリジナリティは出ない。

環奈の多彩な表情とか雰囲気は独特のものがあるのでその強みを生かして磨いていけばいいわけで、作品を重ねるごとに細かい弱点は削られていくはずなので大きな問題ではないと思っているけどね。

【半ネタバレここまで】

 

作品データ・視聴情報

ネメシス
種別 連続テレビドラマ(日テレ系) ※全10話
製作国・公開年 日本 2021年 (2021年4月11日 - 6月13日)
出演 広瀬すず櫻井翔勝地涼中村蒼富田望生/三島あよな/山崎紘菜/橋本環奈/仲村トオル江口洋介
監督 入江悠(総監督)
観る方法 Blu-ray、DVD、配信(hulu)

※huluでは地上波放送版に加え各話7分程度長い「特別版」も配信しています。本記事では特別版を視聴してレビューを執筆しました。