キンプリ永瀬廉がひ弱ヲタクに化ける。思いと汗が弾ける直球なスポーツ青春映画は今どき逆に新鮮?。選手たちの心理描写と迫力ある映像で魅せる白熱?!公道自転車レース。橋本環奈のマネージャー役が頼もしい。
- イントロ
- 仲間とともに! 前向きキャラと直球な王道路線に驚き
- 公道で展開 自転車レースの駆け引きが見どころ
- ひ弱ヲタク+登坂強い 唯一無二なキャラを永瀬が好演
- してやったりな笑顔がいい 環奈の自転車部マネ役
- 観る人のハードルを最大限下げた“自転車レース映画”
- 作品データ・視聴情報
イントロ
ママチャリで千葉から秋葉原に通う オタク少年・小野田坂道。
そんな彼が出会ったのは、 チームで戦う自転車ロードレース。
ペダルは回した分だけ、強く速く、前に進む。
たとえ限界でも、仲間のためならきっと超えられる。
そして、その想いが起こす熱い奇跡。
(公式サイトより引用)
仲間とともに! 前向きキャラと直球な王道路線に驚き
とにかく主人公小野田坂道(永瀬廉)のキャラ性。
孤独だったゆえ楽しさや喜びを分かち合える仲間ができることを熱望していて、それがかなってからはみんなに期待され集団内で役割を持てることをなによりも喜ぶやつなんだ。
「ぼくはどうしてもあの人に追いつきたい!」
「今の僕には仲間をつなぐ道具がある」
「こんなすごい人達と一緒に走れるんだ。力になれるんだ。ワクワクするじゃないか。」
もう純真さと前向き思考が光を放っていて強烈に眩しい。思春期の屈折度0%。
そんな一人ぼっちだったひ弱な少年も「がんばればできるんだ」を地で行く正統スポーツ青春ドラマになっている。
仲間のために。仲間に支えられてここまできた。必ず乗り越えられる。ワンフォーオールオールフォーワン。
描かれる世界はまさに「友情・努力・勝利」―いわゆる“(日本の男子向け)少年漫画の方程式”。
友情:「志を同じくする仲間を何があっても信じ、護りあう姿勢」
努力:「どんな窮地にあってもあきらめず志のために努力する姿勢」
勝利:「最後の最後まであきらめず勝利を目指す姿勢」
(三ツ谷誠『「少年ジャンプ」資本主義』2009年)
あまりにも直球すぎて仰け反るほど完璧にこの路線を踏襲していて「今21世紀だよね?」って驚くレベル。
「う゛わー!」
「う゛おりゃー!」
「俺は勝つ!」
他のメインキャラたちは賑やかし。
悟空かルフィじゃないかと思うくらい天真爛漫×闘志むき出しで“少年バトル漫画”そのまま。マニアックな筆者はこの無邪気な王道っぷりにちょっと頭クラクラする。
公道で展開 自転車レースの駆け引きが見どころ
そんなこんなでも見どころはある。
「レース」と「駆け引き」。
ほとんどが自転車競技の場面となっていて選手の心理を中心に描かれる。
勝利に執念を燃やすだけでなく、冷静な判断と駆け引きが行われる様子が映し出される。
素人目にはただ走るだけのように見える自転車レースにもここで体力温存するとかあそこで前に出るとかいろいろ戦術があるんだなと勉強になったりする。
メインキャラたちの競技中のモノローグがいってみれば合法『頭文字D』。
「敵のエース、さすがに速い。」
「だが、ここで仕掛けてゴールまで持つのか?」
「こっちも仕掛けるか?。ゴールまで残り7km。」
ドローンで簡単になった空撮、車輪に搭載したカメラなどを駆使して迫力ある映像で繰り広げられることも相まって、実際の試合以上に白熱したレースを見せられる。
だから「行けー!」とそこそこ応援する気持ちになってくる。
ひ弱ヲタク+登坂強い 唯一無二なキャラを永瀬が好演
永瀬くんがひ弱なヲタク・坂道に完全になりきっている。取って付けたような感がまるでない。ジャニーズアイドルがよ。
絵に描いたような超前向き思考のモノローグに週1回往復90km(!)の秋葉原通いで備わった高速足漕ぎという唯一無二なキャラ。
性格面の調整に加えて体力も相当いるはず。
それなのにぶれなく演じきっていてすごいとしかいいようがない。
他のキャラもそうだけど素人の俳優たちが短期間で自転車競技の選手に「なれている」のはすごいよね。
してやったりな笑顔がいい 環奈の自転車部マネ役
さて、環奈。3番手だけど完全に脇役。自転車競技部マネージャーにして自転車店の娘・寒咲幹を演じる。
坂道の登坂の強さを見抜いてさりげなく自転車競技の舞台に引っ張り出す。脇役だけど重要な役どころ。
望みを見抜いて巧みに“タイマン”参戦させるなどいろいろけしかけて悦に入る。してやったりな感じの笑顔が実に楽しそうで。
それでいて嫌味なし。知識と経験に裏打ちされたアドバイスで力強く後押ししてくれるマネージャーの鏡みたいないいキャラ。いい役割をこなしている。
選手役板につく健太郎
今泉俊輔を演じる伊藤健太郎。坂道に転機を与えることになったちょっとふてぶてしい感じのプライド高い選手の役が板についている。
坂東の下手くそ関西弁
それから残念だったのは鳴子章吉を演じる坂東龍汰の関西弁。京阪式アクセントが完全にできていないんだな。
作中ずっと変なアクセントが気になってしまい、最後らへんではもう「彼独特の言語なんだろう」と思うしかなかった。役はこなしているだけにもったいない。
観る人のハードルを最大限下げた“自転車レース映画”
自転車競技―。ちょっとでも描き方を誤ると専門的すぎて大衆を寄せ付けないような題材を入りやすくしている点は評価できる。
アキバヲタクがひょんなことから自転車競技にという流れは斬新。
ただ、坂道の“仲間大事”な純真さには感情移入しづらいし、汗と涙の正統スポーツ青春ストーリーにして少年バトル漫画のようなノリに「くささ」とベタ感は否めない。
競技シーンは、選手たちの心理を描き、迫力のある映像で見せるから本物のスポーツ試合を見る以上に盛り上がるそこそこの味わいがある。スポーツドラマならではの醍醐味といっていい。
これは“自転車レース映画”なんだな。
【3.5】
作品データ・視聴情報
弱虫ペダル | |
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種別 | 映画 |
製作国・公開年 | 日本 2020年 |
年齢制限(日本) | G(なし) |
出演 | 永瀬廉(King & Prince)、伊藤健太郎、橋本環奈、坂東龍汰、栁俊太郎、菅原健、井上瑞稀、竜星涼、皆川猿時 |
監督 | 三木康一郎 |
現在観る方法 | 配信、DVD等 |