若き王が中華統一を目指す原点となった趙からの逃亡劇に心掴まれる。山崎賢人主演中国歴史アクションシリーズ第3作に続編ジンクスはあるのか?。
ストーリー
500年にわたり、七つの国が争い続ける中国春秋戦国時代。戦災孤児として育った信(山崎賢人)は、亡き親友と瓜二つの秦の国王・嬴政(吉沢亮)と出会う。運命に導かれるように若き王と共に中華統一を目指すことになった信は、「天下の大将軍になる」という夢に向けて突き進んでいた。
そんな彼らを脅威が襲う。秦国への積年の恨みを抱く隣国・趙の大軍勢が、突如、秦への侵攻を開始。残忍な趙軍に対抗すべく、嬴政は、長らく戦から離れていた伝説の大将軍・王騎(大沢たかお)を総大将に任命する。決戦の地は馬陽。これは奇しくも王騎にとって因縁の地だった…。
出撃を前に、王騎から王としての覚悟を問われた嬴政が明かしたのは、かつて趙の人質として深い闇の中にいた自分に、光をもたらしてくれた恩人・紫夏(杏)との記憶。その壮絶な過去を知り、信は想いを新たに戦地に向かう。100人の兵士を率いる隊長になった信に、王騎は『飛信隊』という名を授け、彼らに2万の軍勢を率いる敵将を討てという無謀な特殊任務を言い渡す。 失敗は許されない。秦国滅亡の危機を救うため、立ち上がれ飛信隊!
(※公式のものにふりがなと配役を付記した)
覚醒する亮嬴政の姿に本気で痺れた
嬴政が中華統一を目指す原点となった人質だった趙からの逃亡劇。
人々に虐げられたことから悪い幻をみるほど劣等感に苛まされていたが、「月の輝きの意味」を教え、秘密裏の脱出計画を請け負う闇商人・紫夏に励まされるという切なくも優しい話からの急展開。
西部劇のようなゴツゴツとした岩々が並ぶ荒野の中、あと少し進めば援軍が来るというところで追手がかかり騎馬兵隊に迫られる。たった3名の味方だけで必死に振り払う緊迫の馬車アクション。
その時、弱気だった嬴政が味方に号令をかけるのだ。“王”の血が目覚め、天下取りへの確固たる意志が芽生えた瞬間だった。この嬴政の姿に本気で痺れた。
心境の変化を違和感なく表現する亮の演技によって、物語に説得力が与えられるばかりか、観る者の心を確実に掴んで離さない。
亮の腕のすごさを見せつけられたし、嬴政のドラマを入れたのは大正解だ。
紫夏役の杏が良い
そして、闇商人・紫夏役の杏が実に良かった。
美しく優しく、凛々しく頼もしい。
もう全部盛りでずるい(笑)。
美談ポジション故にやられた際しゃべりすぎる気はするが、映し出された魅力的で印象に残るキャラは、テーマからブレることなく世界観に奥行きを与えている。
環奈貂は戦場を見る
橋本環奈が演じる河了貂。“軍師見習い”として主に戦場視察の部分に登場するが、本筋に出てくる役者が良すぎるだけに持って行かれているのが残念。
第2作(撮影は2020年らしい)の最後に告知が出たくらいだから下手すると数年前に撮影した可能性もあるので「キングダムでの環奈すげー」となるまでには少し時間がかかるかもしれない。
第4作では環奈貂のさらなる活躍を期待したい。
気になるところはある?大作品質は健在
クライマックスの岩山の一部場面で明らかにCGとわかる映像の質が残念だったり、侵攻され存亡の危機となっているはずの秦の切迫感があと一歩伝わってこなかったり、明らかに続編を前提とした作りといったちょっとだけ気になる点はある。
とはいえ、突然の侵攻を前に劣勢・秦が王騎の才覚で強敵打倒を図ろうとする頭脳戦でもあり、信の部隊が与えられた〈小勢をもって大敵を討つ〉特殊任務も冒険感があって目が離せないし、“古代中国”っぽい景色の中で大量のエキストラを使用した圧倒的な軍勢と臨場感あるカメラワークとリアルさにスピード感を組み合わせた殺陣による戦闘の迫力は健在。
山崎、大沢、そして羌瘣役の清野菜名を始めとする俳優陣の役に馴染みきった演技も良い。
映画の巨大スクリーンにふさわしいスケール感の大作映画で見応えある。
【4.0】
2023年7月28日(14時20分の回)、映画館で2D版を鑑賞(客数全19名)。
作品データ・視聴情報
キングダム 運命の炎 | |
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種別 | 映画 |
製作国・公開年 | 日本 2023年 |
年齢制限(日本) | G(なし) |
出演 | 山崎賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/満島真之介/岡山天音/三浦貴大/杏/山田裕貴/片岡愛之助/山本耕史/佐藤浩市/大沢たかお |
監督 | 佐藤信介 |