かんな座

“俳優橋本環奈”と映画・ドラマの味わい方

キングダム2 - 大地で激突!手に汗握る迫力の戦闘シーン

キングダム2
キングダム2

隣国との戦を歩兵目線で描く最前線の臨場感。清野菜名のドラマに感情移入。橋本環奈はお留守番?。山崎賢人主演の中国歴史アクションに続編ジンクスなし。

※2022年9月2日加筆・修正しました

ストーリー

時は紀元前。春秋戦国時代、中華・西方の国「秦」。戦災孤児として育ったしん山崎賢人)は、王弟のクーデターにより玉座を追われた若き王・嬴政えいせい吉沢亮)に出会う。天下の大将軍になると一緒に誓いながらも死別した幼馴染のひょうとうり二つの国王に力を貸し、河了貂かりょうてん(橋本環奈)や山の王・楊端和ようたんわ長澤まさみ)と共に王宮内部に侵入する。

信は立ちはだかる強敵を打ち破り、みごと内乱を鎮圧。玉座を奪還することに成功した。しかし、これは途方もなき戦いの始まりに過ぎなかった――

半年後、王宮に突如知らせが届く。隣国「魏」が国境を越え侵攻を開始した。秦国は国王嬴政の号令の下、魏討伐のため決戦の地・蛇甘平原だかんへいげんに軍を起こす。

歩兵として戦に向かうことになった信は、その道中、同郷の尾平びへい岡山天音)と尾到びとう三浦貴大)と再会。戦績もない信は、尾兄弟に加え、残り者の頼りない伍長・澤圭たくけい濱津隆之)と、子どものような風貌に哀しい目をした羌瘣きょうかい清野菜名)と名乗る人物と最弱の伍(五人組)を組むことになってしまう。

魏の総大将は、かつての秦の六大将軍に並ぶと噂される軍略に優れた戦の天才・呉慶ごけい小澤征悦)将軍。かたや秦の総大将は戦と酒に明け暮れる猪突猛進の豪将・麃公ひょうこう豊川悦司)将軍。

信たちが戦場に着く頃には、有利とされる丘を魏軍に占拠され、すでに半数以上の歩兵が戦死している隊もあるなど戦況は最悪。完全に後れを取った秦軍だったが、信が配属された隊を指揮する縛虎申ばくこしん(渋川清彦)は、無謀ともいえる突撃命令を下す――

(公式より)

壮大なスケールで展開される戦闘シーンの迫力

「本当に万単位の人間がいるんじゃないか」「どうやって撮ったんだ?」

なんと言っても蛇甘平原の広大さ。そこに展開される魏軍の大隊列の規模のデカさ。

前作同様のスケール感にまず圧倒される。

前作の下から上り詰めていくRPG的な冒険(+ゲリラ戦)から打って変わって本作では、国と国同士の武力衝突が描かれる本格的な歴史戦争アクション劇。

ぶつかり合う大勢の歩兵、突進してくる騎兵、そして馬車まで。己の剣で敵をなぎ倒す!。高くジャンプする描写もあるけど身体能力の高さとしてのリアリティに収まる範囲だ。

戦闘シーンの迫力と臨場感は普通に大作映画そのもので興奮の連続。

乗馬の立ち回りはもう圧巻。ものすごい数の兵士エキストラの中、山崎賢人がスタントなしで馬に乗って疾走しながら攻撃する。壊れる敵の馬車、ひっくり返る軍馬。

兵士が首を斬られて血が吹き飛んだり、(戦以外のシーンだが)生首も大写しになるなどリアルな状況を見せるもののグロくならないぎりぎりの演出とアングルは、「G(年齢制限なし)」で可能な限りリアルに魅せようとする作り手の意気込みに好感。

それに大勢の兵士が進撃する時の大地に響き渡るような雄叫び。緊迫感と壮大さを増幅させるようなBGM。音の迫力も半端じゃない。

展開としては劣勢からの突撃、有利とされる丘の攻防戦。機転と勇気で形勢逆転するも絶体絶命か?。

仲間の安全か、目前の勝利か―。究極の選択を迫られる信。初めて戦争の現実を経験して葛藤が生まれる。

一歩兵として戦に参加した信の目線で描かれる最前線に終始ハラハラしきりだった。

また、謎のメンバー・羌瘣のドラマ、さらに将軍たちの生き様が描かれるそれぞれのドラマが戦という大きな流れの中にいい感じで絡み合ってきて心を掴まれる。

物語に説得力与える山崎賢人の演技

このシリーズが良いなと思うのは、主人公・信の描き方。「いつか天下の大将軍になってやる」と血気盛んな戦災孤児が自己流剣法を磨いて王の家来にまで上り詰めるのだが、決して一人で大勢を壊滅させたり、超人的なヒーローとして扱わないリアリティが本作も同様。

王の友人といえる関係なのに下っ端の歩兵に参加させられるのだ。剣は強くても戦績のない田舎の少年だから当然。戦乱の世に戦の童貞がリーダー格に抜擢されたら不自然なわけで。

信が残りの者たちで伍を組まされて初陣に臨む展開は、同郷の友の懐かしさといった普遍的なところから入って、実績ない者や弱い者は売れ残るといった現実に直面して戸惑う流れで信の《初心者が参戦する》感覚を追体験させられるのだ。

本物の戦に興奮して「行くぞー!」と雄叫びを上げる信にこっちまでワクワクが伝わってくる。

なによりも信を演じる山崎賢人が良いんだろうね。少年漫画的でわかりやすい主人公なのに信というキャラの魂が身体の隅々まで行き渡ったような賢人の演技によって、物語、状況に説得力が生まれている

清野菜名、キャラのドラマとアクションの両方で魅せる

窮地で技と力を見せつけてくる正体不明の羌瘣。華麗に舞うようなシャープでスピーディーな立ち回り。

剣はすこぶる強いのだが、次第に呼吸が乱れて息が荒れてくる様は、その息遣いが生身の人間らしくて、観ているこっちまで思わず息が上がってくるような生々しさ。

羌瘣の哀しい目の理由と参戦した目的が明らかにされる回想ドラマもありがちな悲劇パターンなのに引き込まれていくし、感情移入を誘う。普遍性と独創性のバランスが絶妙な脚本の良さがあるけれども、何と言っても清野菜名が一人の孤独な少女の心情をうまいこと表現しているからだ。

瞼の上から発せられる鋭い殺気と本格アクションスキルを持ちながらかつ哀しみや愛情をナチュラルに表現できる役者は本当に素晴らしいと思う。(『耳をすませば』観たくなったよ。ジブリ嫌いなのに。)

羌瘣に焦点が当てられた人間ドラマは本編終わっても心に残るよ。

環奈と亮は?

お留守番環奈貂

環奈が演じる河了貂は、冒頭で嬴政を暗殺者から守るけど、見事に王宮お留守番。

どうしても出番が短すぎて「ヤジロベー」的キャラの味わいは感じ取りにくいし、なによりも様々なキャラの人間ドラマも交わる今回の物語の本筋に異色キャラで一枚噛めなかったのには物足りなさを感じる。もっと出番つくってほしかった。

隠せない気品の亮嬴政

吉沢亮、今回は(は回想のみなので)演じ分けがない分、気づかない人もいるかもしれないが、演じる嬴政の王様的な気品と貫禄の出し方は普通にすごいと思う。

それから「亮くんって“美しい”んだな」と嫌でも気づかせてくれるカメラワークになっている。

まとめと評価点数

見え隠れするテーマは少年漫画の方程式(「友情・努力・勝利」)であって、騙し合いなどの複雑な人間関係は控えめで、映し出される古代中国っぽい景色は前作と比べて種類が少ない。

だけどそういったことを気にさせない壮大なスケールと迫力、人間ドラマ込みの展開と演技で魅せる歴史アクションドラマに仕上がっていて、前作同様見応え十分。観終わったらいい感じ疲労感。

【4.0】 4DX版はもっとすごかったのかなあ

キングダム2
津の映画館にて
キングダム伍巻
入場者プレゼント「キングダム伍巻」

2022年8月29日(21時5分の回)、映画館で2D版を鑑賞(客数全9名)。

作品データ・視聴情報

キングダム2 遥かなる大地へ
種別 映画
製作国・公開年 日本 2022年
年齢制限(日本) G(なし)
出演 山崎賢人吉沢亮/橋本環奈/清野菜名満島真之介岡山天音三浦貴大濱津隆之真壁刀義山本千尋豊川悦司大沢たかお
監督 佐藤信