『リング』監督が贈る橋本環奈、重岡大毅ダブル主演ホラー映画は怖い?。前評判を遮断して完全鑑賞レポ。
イントロ
「――この事故で伊原美雪さんが死亡しました。」
聞き覚えのある名前を耳にした映像ディレクター・倉沢比呂子(橋本環奈)は、かつての同僚・伊原直人をふと思い出す。その後、美雪の葬式で再会したことをきっかけに周囲で次々と不気味な出来事が起き始めてしまう。過去にも同じ経験があった比呂子は、恐ろしい現象の根源を探るため、伊原家へ向かう。
伊原直人(重岡大毅/ジャニーズWEST)が息子・春翔に冗談半分で教えた小さな嘘。
「ねえパパ、トカゲの尻尾を埋めたらトカゲが生えてくるの?」「そうだよ。でも、ある呪文を唱えないとダメなんだ。」
仲睦まじい二人を妻・美雪(ファーストサマーウイカ)が見守っていた。幸せな生活を送る伊原一家。そんなある日、直人の元に愛する家族に起きた事故の報せが届く…。
エロイムエッサイム、エロイムエッサイム―
春翔の声が聞こえる。比呂子が目撃したのは、失った母親に会いたいという純粋な願いを叶えようと、庭の盛り土に向かって呪文を唱えている異様な光景だった!さらに呪文に呼応するように土の山は、蠢き肥大化していく…。そしてついに、それは庭から蘇る!最凶モンスター美雪が比呂子と直人に襲いかかる!
終わらない恐怖の先で果たして、二人は生き延びることはできるのか!
(公式より)
世界観とマッチする環奈の演技
主役・比呂子役の橋本環奈の演技が良い。緩急の付け方や微妙な演技のさじ加減は過去NO.1級だと思う。今まで環奈のベスト演技作品として挙げてきた『インフルエンス』を超えている。キャラ作りに迷いがなくて、申し分ない。撮影時期的には後の作品となる『王様に捧ぐ薬指』は、世間的に忘れてほしいとさえ思った。
そして得意とする豊かな表情がすごく生きた。衝撃を受けたときの目を大きく開いて驚くリアクションがホラー場面に良くマッチしている。
なんとも頼もしい。
オマージュか?手抜きか? やたら多い昔の要素
投げ込まれる一つ一つの要素が古い。
職場や「普通の家庭」の描き方がどことなく1990年代風で監督か原作者の頭の中が随分古いなあと思ったのも束の間、落雷で起きる超常現象、怪しい霊能者、荒い画質から怪奇現象を見つけ出す(1980年代の心霊写真ブームみたい)、ユリ・ゲラーばりのスプーン曲げ、蘇る死体…。
そして「エロイムエッサイム」という呪文。
一定の世代以上から見ればどこかで観たような材料のてんこ盛り。往年の要素を入れてはいけないとは思わないが、この2020年代に新しい映画を世に送り出すにしては、“鮮度”にこだわっていないのが不思議だ。本筋としても目新しい要素や新鮮な刺激もないに等しい。
若手をメインに据えた新作ホラーとして渋すぎでしょ。
ホラーを見守る作品?
《激辛を食べたような刺激はないが、辛い料理をがんばって食べている人を鑑賞する作品》といった感じ。
暗闇の中を逃げ惑うなどのホラーの超・王道を踏襲しつつも観ているこっちがゾクッとしたり「ギャーッ」と悲鳴を上げたくなるところまではいかないので純粋にホラー度は低いかもしれない。
というのもクライマックスの化け物のCG合成っぽさからはどうしても“作られた”感じが否めないからだ。「一番怖そうなメイクしてみました」感のある形相も比呂子たち登場人物はさぞかし怖かろうと思うが…。
ちぎれた指や生首を出す覚悟があるのならもう少し「ゾンビ」的なリアルグロ志向で貫いても良かったのではと思う。
それから序盤のかなり落ち着いたトーンでやや退屈してしまう。
これについては、「普通」から始まって徐々に「ありえない現象」が少しずつ大きく強くなっていく上り坂型のストーリー展開だから、荒唐無稽さに胸焼けすることなく物語世界に入っていきやすいということが後で分かる。
そして序盤にさりげなく伏線が撒かれていて、見事終盤で回収される。最後に謎が明かされるミステリホラーとして楽しめなくはないのだ。
【3.5】あまり怖くないけど悪くない。役者の演技は良い。
2023年9月15日(16時50分の回)、映画館で鑑賞(客数全4名)。
作品データ・視聴情報
禁じられた遊び | |
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種別 | 映画 |
製作国・公開年 | 日本 2023年 |
年齢制限(日本) | PG12 |
出演 | 橋本環奈/重岡大毅(ジャニーズWEST)/堀田真由/倉悠貴/正垣湊都/猪塚健太/新納慎也/MEGUMI/清水ミチコ/長谷川忍(シソンヌ)/ファーストサマーウイカ |
監督 | 中田秀夫 |