再演の千尋は一味違う?!。名古屋・御園座公演をライブ配信で鑑賞してみた。
舞台表現力が増した橋本環奈
1年経った環奈は違った。
初演よりも表現力を高めていて、ずーっと追いかけてる者としてはぞくぞくした。
台詞回しのメリハリ、喜怒哀楽の表現の幅が増していて、一つ一つの台詞にしっかり表情が見える。
序盤の「あのー、すみません。釜爺さんですか?」「ここで働かせてください」といったまだ弱々しい千尋。
リンとのやり取りでみられる子どもの愛らしさを経て、第二幕。
「ハク、しっかりー!。こっちよー、ハクー!」。
しっかりとした声量に響きの良さ。声を張り上げても無理のない演技。
役になりきるだけでなく、舞台上で確実に演じられる武器が備わってきた感じだ。
もう「舞台もできる俳優」ではなく、「舞台俳優」と呼んでいい。
演出変更の兼ね合いもあるかもしれないが、表情や仕草も初演の〈一般的に言うところのアニメっぽいキャラの造形〉から、しっかり噛み砕いた「10歳少女」の役を表していたように思う。
成長した大人ならではの役に対する深い解釈がその内面の表現において強く作用したのだとしたら、「子どもにはできない子ども役」というのがあるのだなと教えてくれた気がする。
再演の注目点
千尋の父/兄役役(誤字ではない)の堀部圭亮が良かった。そのリアル志向の演技は、〈必ずしもアニメ寄せではない〉今回の再演の注目すべきポイントの一つ。
それから夏木マリが演じる湯婆婆は、初演より迫力が上回っている印象。オリジナル湯婆婆としてぜひロンドンにも立ってもらいたい。
惜しかったのはハクが変身するシーンのカメラワーク。演じる三浦宏規のポーズはかっこいい反面、龍体となって飛んでいくところが画面越しにはしょぼく見えてしまっている。
舞台『千と千尋』の完成形かもしれない
正確には比較できないが、特に序盤の演者、黒子と音楽がより滑らかにシンクロしていてい心地よく、生の舞台ショーとしての完成形を見ている感じがした。
この一体感を生み出せたのは、やはり再演ならでは。
初演のクオリティに加え、演出の一部改善などさらに磨きがかかっている。
ハク龍の動きもより生き物感が増した。
今回は配信鑑賞となったが、やはり劇場で観たいという思いを強くした。
あの空間に包まれたいし、生演奏に浸りたいなあ。
【4.5】
記事
本記事は『[舞台]千と千尋の神隠し』(2023年)下記回の配信鑑賞を元に執筆しています。
作品データ
[舞台]千と千尋の神隠し | |
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種別 | 演劇 |
製作国・上演年 | 日本 2023年※再演 |
出演 | 8月20日昼:[千尋]橋本環奈/[ハク]三浦宏規/[カオナシ]山野光/[リン/千尋の母]華優希/[釜爺]田口トモロヲ/[湯婆婆/銭婆]夏木マリ |
演出 | ジョン・ケアード |