かんな座

“俳優橋本環奈”と映画・ドラマの味わい方

かぐや様は告らせたいファイナル - 完結作にしてようやく?

かぐや様は告らせたいファイナル
かぐや様は告らせたいファイナル

ダメさ加減が目についた前作のトラウマで後回しにしていた2作目を今頃配信で視聴してみたら…。キンプリ平野紫耀と橋本環奈ダブル主演のラブコメは完結作でようやくまともに?。

あらすじ

将来を期待されたエリートたちが集う私立・秀知院学園。その最高ランクに位置する生徒会において学園史上最も白熱する戦いとなった『第68期生徒会長選挙』。

白銀御行と四宮かぐやの選挙戦は終結したものの二人の恋愛頭脳戦には決着がつかないまま幕を閉じた?。

会計・石上優、書記・藤原千花に新メンバー・会計監査の伊井野ミコを加え、再び集結した生徒会。

変わらず好き合っているものの未だ「告白したほうが負けである?!」という呪縛から逃れられず、神聖なる生徒会室で“いかにして相手に告白させるか”の恋愛バトルを相も変わらず繰り広げていた……。

そして迎えるは学園の2大イベント《体育祭》と《文化祭》。今度こそ相手に“告らせる”ことができるのか!?

(公式より※読点・段落を修正

 

ちゃんと“ドラマ”している

前作のチグハグなツギハギと違って一つのドラマとしてうまいことつながっているじゃないか。

初っ端から「チンチン」、「合コン」、「乳繰り」、「下手すぎて卒倒」…など良い子のみんなはおねんねしなきゃ展開で地上波で流れたらファミリー気まずいモードが大丈夫かって感じなんだけど、中盤は体育祭を舞台に石上優佐野勇斗)の過去にまつわるエピソード、後半は文化祭と進路の選定といったイベントで学園内の人間模様や白銀御行平野紫耀)と四宮かぐや(橋本環奈)のやり取りをクールなセリフ回しでアニメ版のようなちょっぴり哀愁漂う雰囲気に描いている。

コミカルキャラのギャグも物語のアクセントにとどめていて無理がないし、白銀とかぐやの頭脳使いすぎな恋愛駆け引きもストーリーにうまく溶け込んでいて、作品全体を貫くラブストーリー最後の一捻りにもなっている。

ストーリーで魅せる作品に成長している。半ネタバレだけどラストはいいカタルシスかぐやを演じる環奈の抱き心地よさような身体から温もりが伝わってきそうで胸熱ならぬ胸温になる。

ああ、やっとラブストーリー、ホントの意味でのラブストーリーをシリーズ2作目にして観せてくれた。ファイナルでやっとこさスタートラインに立ったってもう遅いんだけどな。

脳みそ無駄使いモノローグ駆け引きのバカバカしさなど小ネタで見どころを抜き出さなくていい内容で助かったぞ。

かぐやをよりリアルにした環奈の表現力向上

かぐやと『かぐや様』世界を表現している環奈の段違いのレベルアップが大いに影響を与えている。

前作は決して下手ではないんだけどどこか漫画寄せ=作られた感があった。最初なのでキャラ再現(ビジュアル、所作、喋り方)に重きが置かれるのは当然の要請ではある。

そうした“ある種の物真似”から現実キャラとして独り立ちさせるには映画1本では時間が足りないし、おそらく当時の環奈にはやや力不足だったと思う。

しかし、環奈によって命が吹き込まれた3次元かぐやは、本作で見事完成をみた。もはや四宮かぐやは再現された漫画キャラではなく、「現実世界にいるちょっと変わった女の子」に昇華したのだ。

だから、「白銀が好きだけど素直になれない頭脳明晰なお金持ちの副会長かぐや」がとてもいじらしく思えてならないんだ。

環奈のかぐや様
環奈のかぐや様

「もうアニメの雰囲気でやろうぜ」と製作側が諦めた(?)ことと環奈の演技力によって本作はラブストーリーとしてようやく成仏することができたといっていい。

それから前作評では割愛したけど藤原千花を演じる浅川梨奈にはナイス助演賞をあげたい。あと応援団副団長子安つばめに“化ける”福原遥の力量には恐れ入った。

反則級パロディに呆れる

一方でダメ出ししたいところも多い。

パロディが露骨すぎること。

橋本環奈が他作品で演じたキャラをセルフパロディしちゃうなんて反則もの。「京子」や「北条美雲」ってはっきり言っちゃっていて呆れるしかない。

それから白銀の父高嶋政宏)が白ブリーフ一丁でカメラ担いで…「全裸監督」。なんの捻りもない。

こんなのはパロディじゃなくてただの真似。「お客さん困りますよ」と店員さんに怒られる“持ち込み”で一発アウト。

他作品キャラ出せば喜ぶと思っている。流行り物を出せば受けると思っている。

なんていうか“治療嫌がる子どもを宥めるために用意されている診察室のおもちゃ”。「ほーらウルトラマンが付いているから怖くないよー」みたいな。

そういう大人の観客には意味のないご機嫌取りが少々鼻につく。

あと、佐藤二朗は今回本気で必要ないし、展開が透けて見えるキャッチコピーもなんとかならなかったのか。

製作と監督のセンスのなさは相変わらず健在。

バランスは良い

演技、演出ともに変な気負いがなく自然体。画的にも基本的にトーンが統一されている。ぶっ飛んだ場面や大掛かりな仕掛けはなくても作品の持つ世界観とストーリーで魅せる。わざとらしい笑いは格段に減った。

ただ、前作の「花火」のようなわかりやすい山場はないし、そもそも初見の人には予習が必要になるかもしれない点はあるもののバランスの良い出来。

【3.5】

作品データ・視聴情報

かぐや様は告らせたい -天才たちの恋愛頭脳戦- ファイナル
種別 映画
製作国・公開年 日本 2021年
年齢制限(日本) G(なし)
出演 平野紫耀(King & Prince)、橋本環奈、佐野勇斗、浅川梨奈、堀田真由、影山優佳(日向坂46)
監督 河合勇人
現在観る方法 配信、Blu-ray、DVD