「油屋」再び。テレビ画面に映し出される“生身の”10歳千尋。東京・帝国劇場公演橋本環奈主演回の初配信を観て感じた“安定感”。
大千秋楽より良い?帝劇版の環奈千尋
「寂しくなるよ、千尋」。この冒頭のセリフを聞いたとき、とても安心した。
大阪千秋楽では“千尋声”が温まるまで少し時間がかかったけどそれがない。
環奈の千尋声とセリフ回しを始め、表情や仕草などを含めてベストというか安定パフォーマンス。無垢な10歳少女・千尋感がよく出ていて、うん、これこれ。
名古屋での大千秋楽はちょっと力みすぎたのではと感じるところがあったが、メリハリ付いて自然な演技の安定感。
中盤の「リンさん、…番台ってなに?」。このセリフには穢れを知らない少女の愛らしさが存分に表れていた。
脇役表情までよくわかる“解像度”
プリンシパル(主要キャスト)のみならずアンサンブル(脇役)の表情までよくわかるカメラワークが良いよね。「あー、そういう表情や動きしてたんだ」と劇場、生配信を経て今回で“解像度”がぐんと上がった感。配信なのに5,500円も出した甲斐があったぜ。
ただ、ズーム多用は気になるところも。ハクが龍の姿から戻るシーンは、“仕掛け”が見えるからもう少し「引き」でよかったと思うし、兄役のおねだりダンスの終わり部分が収まってない。
逆に雑巾がけシーンの環奈ズームはまたまたなし。劇場で観ているとお尻の形だけで「あっ、環奈ちゃん!」ってわかる醍醐味があったんだけど。
この舞台、演技も演出も東京公演を踏まえて大阪、福岡、札幌、名古屋と“改良”していった部分はあるように思うし、まだまだ環奈の演技は天井が見えていないと思うからあえてベストとはしないけど、映像記録されている数少ない回の中では、一推しの回であるのは間違いない。
何度も観ているのになぜか入り込んでしまう「油屋」の世界の不思議。奥行きのある舞台で繰り広げられるこの緻密かつダイナミックな演劇はやっぱ見応えあるし引き込まれるなあ。
期間限定とは言わず、いろいろな人に観られてほしいぞ。
記事
本記事は『[舞台]千と千尋の神隠し』(2022年)下記回の配信鑑賞を元に執筆しています。
- 橋本環奈主演回(3月16日夜、東京・帝国劇場収録分)