超現実キャラとローティーン目線の身近なアクション。“中学生のすぐそばアドベンチャー”に二宮和也演じる役の悲恋や温情に心動かされる?シリーズ完結編。橋本環奈のアイドル扱いが今となってはもどかしい。2016年。
学園祭から反乱まで? 身近な超現実に大人のドラマが交差する
学園祭は暗殺のチャンス。俺たちの標的であり担任教師であるグレープフルーツ頭のタコ野郎・殺せんせー(声:二宮和也)は、未だ誰も仕留めることのできない大化け物。
演劇に殺せんせーが出れば「桃太郎」なのに「桃」が絶対割れないから話にならないドタバタ展開。そんなふざけた余裕しゃくしゃく先生は、暗殺者に必要な知識と知恵を惜しみなく伝授するから不思議。
正体隠してE組生徒にまぎれていた半化け物を今まで身につけたテクニックで殺さず救えるかゲームを経て、一作目よりも成長してい生徒たちに明かされる殺せんせーの過去。
結構心温まる人間関係ドラマが一作目と違う質感だ。
殺し屋には絶対見えない雰囲気だけど(すまん)、顔に似合わずうまいニノ。闇から拾い上げてくれた女性との特殊能力を生かした壁越しの恋が切ないよ。裏街道を歩んできた死神ならではのきっかけに基づく絆があったのだ。
何かが芽生えてきたE組生徒たちは、ある目的に向かって結束するけど大人はわかってくれないと失望する。
今まで鍛えてきた知識や能力をフル稼働させる中学生。爆発の中キャンプを破壊するE組。もうチューボーのモンカダ兵営襲撃状態は普通ムボー。やればできる感が炸裂。
強烈な復讐心に支配された不気味な怪物、大きさがえげつないラスボス。こういうメリハリがいいよね。
成宮寛貴がはまる隠れ悪役
不気味な役どころのカイトくん(違う。成宮寛貴)。『ブラックジャックによろしく』第1巻表紙のようなキリッとした表情と佇まいがね、隠れ悪役として似合い過ぎなのよ。『相棒 Season 13』のダークナイトみたいに雰囲気とぴったりだ。それで演技がいいからほんと惜しい人を亡くしたと思う(死んでない。俳優辞めただけ)。
生徒を想う良き先生(?)との絆
「卒業証書を受け取ってください」。
殺せんせーのこの一言に情が込められていて、生徒のためを想う先生が伝わってきすぎ。ニノのウェットな声演技の魅力。
最初はなんだこのグレープフルーツ頭と漫画的荒唐無稽さに驚いたけど、最後には憎めないどころか好きになってしまっている自分に気づく。感極まって「せんせー」って叫びたくなるよほんとに。
それから裏街道は終わり方も裏街道。アホな顔には似合わないけどゲバラのような最後が待っていた。
ただね、美化しちゃいかんでしょ。ダークならダークでいかないと。
アイドル的立ち位置もどかしい 環奈のピンポイントキャラ
また絶対領域だかんな。橋本環奈演じる自律思考固定砲台、通称律のAIらしい棒読みでまさかの襟を開く大サービスにびっくりだ。
一作目同様『かぐや様』の浅川梨奈以上にピンポイント出演が今からすると隔世の感ありすぎ。
「スエットでだらける」シーンがあるのだが、当時は良かれと思ってこんな役させている感じがなんともアイドル的立ち位置というか。今からすればそれがもどかしい。
一作目同様の品質に心通わせるエピソードが加わった完結編
描き方、切り口は独創的でちょっと寓話的な部分も交えつつ適度に盛り上がるエンタメ性。原作をなぞるだけに終わらない十分単独で成立している娯楽映画。…という点は一作目で指摘したとおり本作も同様。
大きく違うのは二宮和也演じる死神のドラマと“別れ”の悲しみ。
一見荒唐無稽だけど中学生くらいのティーンが等身大の成長過程を重ね合わせることができる本シリーズ。
一作目から一歩進んで人の成長には他者への理解が不可欠という視点が加わった感じ。大人は悲しいことや辛いことを色々経験しているのだ。感受性強いティーンたちに訴えかける殺せんせーワールドの悲劇とある種のリアリズム。ニノがほんといい役こなして表現しているんだ。
暗殺を学んだけど悪い知恵は良いことにも使える。逆もしかり。能力は諸刃の剣といったメッセージ性もある。
本作での殺せんせーは着ぐるみ多めで「あれ予算不足か?」と思わせるけどCG自体はちゃんと作っていて、最後の格闘シーンはもはやSFロボットアクション並みの造形で驚かされるぞ。
【3.5】
作品データ・視聴情報
映画暗殺教室 -卒業編- | |
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種別 | 映画 |
製作国・公開年 | 日本 2016年 |
年齢制限(日本) | G(なし) |
出演 | 山田涼介、二宮和也、菅田将暉、山本舞香、桐谷美玲、竹富聖花、優希美青、上原実矩、橋本環奈 |
監督 | 羽住英一郎 |
現在観る方法 | 配信、DVD等 |