かんな座

“俳優橋本環奈”と映画・ドラマの味わい方

暗殺教室 - 意外と見応えある“中学生のすぐそばゲーム”

暗殺教室
暗殺教室
奇抜なキャラに独特な世界観だけど身近な舞台で大暴れする“中学生のすぐそばゲーム”。観る人を選ぶ可能性はあるけど、適度な盛り上がりで原作知らなくても感じる見応え。映画2本目の環奈はコスプレかわいいキャラでも将来が見える?。2015年。

グレープフルーツ頭のタコ野郎 余裕しゃくしゃくが癪に障るけど…

グレープフルーツのような黄色の球体頭にスマイリーフェイスのように抽象的な笑顔。

タコ足みたいな触手を持つその超生物は月を破壊した怪物。

そんな人類の強敵が俺たち落ちこぼれの教室に「先生」としてやってきた。

奇抜なキャラに驚く暇もなく押し寄せる壮大な中二病的世界観。

月を破壊したこいつは次に地球を破壊すると言っている。そこでこの超生物を暗殺させる任務を国家から託されたのだった。

全然中学生に見えない落ちこぼれE組の生徒たちは「絶対に殺せない」こいつを隙みて殺すため特殊な武器が渡されている。朝の挨拶で銃撃するなど何かに付けて殺そうとするけど音速移動でかわされてしまう。

クラス一のワル・赤羽業あかばねかるま菅田将暉)が家庭科授業中に暗殺を試みても高速でかわいい格好に着せ替えられてしまう。適当に揶揄われるように。

そいつは今までの行いに似合わない丁寧な言葉づかいと余裕しゃくしゃくの態度が癪に障る。「ぬふふふ」と取って付けたような笑顔で笑う得体のしれない不気味さ。

でもよくよくみればありがちな学校教師かもしれない。グレープフルーツ頭(怒ると真っ赤なトマト)の超生物が結構真面目に授業したり生徒を指導するミスマッチのおかしさ。破壊者なのか教育者なのかわかんない。

あらゆる教科に秀でていないと良い暗殺者になれないと説き、落ちこぼれ生徒たちを勉学に励ませる超生物は殺せんせーとあだ名が付けられた。

「私を暗殺してみせなさい」。

学校は先生絶対の“封建社会” 最大限誇張した舞台で挑む「中学生のすぐそばゲーム」

暗殺と教室。超生物と中学生。落ちこぼれと国家的任務。 この一見してありえないような組み合わせ。

でも暗殺はともかく一回くらい先生をぶん殴ってやりたいと思ったことがある人も少なくないのでは。

日本の中学校・高校はとにかく閉鎖的。

学校という閉鎖社会では先生が絶対的権力を持つ。

味方のフリをしても結局は大人の事情で裏切ることも平気でする。

汚い大人だ。やっつけてやりたいと思っても表面的には丁寧な言葉づかいで隙がなく余裕の態度を見せやがる。仕事として勉強を教えているくらいだから頭もかなわない。暴力的でなくても「先生」とは手強い相手なのだ。

殺せんせーは日本の多くの中高生が共有している「先生」像。そいつを殺そうとする“ゲーム”から拡げて数々の障壁に翻弄されるといった中高生が日々抱える苦悩を超現実化して描いており、自分の状況と置き換えて感じることができるようになっている。

「暗殺合宿」に「夏休み暗殺大会」。暗殺の文字さえなければ日本の中高生が普通に理解しやすい要素だし、起きる出来事も未熟なティーンに教訓的。

菓子ごときで買収されちゃダメよ。真正面から向かっていったら敵の罠にはまるぞ。「100億円あれば人生バラ色」なんて短絡思考に陥るバカなE組生徒たち。

あらゆる学問を学び、敵の調査研究に勤しみ、不測の事態に備えて予備を持っておく。勝つためには腕力だけではないことや相手を油断させることも必要…などなど学んでいく。

「毒を敵に飲ませるためには国語力が必要」なんて屁理屈に集約される殺せんせー流の極意は、置き換えれば大人になる上で必要なことを説いた人生訓だったりするから案外深いのだ。

それでいてスリリングな展開でティーン心をつかんでいる感じだ。シューティングゲームや格闘の要素も交えて盛り上げ、「触手一本減らすとこども分身ができちゃう」みたいなシュールなギャグも織り交ぜられる。

クライマックスは無邪気な中学生たちが本気で武装する。学んできたことを生かして「殺す」工夫する様が実に健気。みんなで結束して敵に立ち向かう。身近な場所でのアクション。

意外なラスボス登場。

そして芽生える感情。一捻り付き。ドンデン返し。

嫌なやつキャラが最高にうますぎ高嶋政伸

ところで嫌なやつキャラが最高にうますぎ高嶋政伸。これでもかと絵に書いたような悪役ぶりが強烈な印象。一瞬覗く表情に狂気を感じたよ。むしろ普通の役よりいいんじゃない?。こんな役も引き受けるんだな。

かわいい脇役環奈に隔世の感 隠せない開花の予兆?

自律思考固定砲台、通称律という武器のAIを演じる撮影当時15歳の環奈。そう見えない生徒が多い中、リアル中学生だよね。

冷静で合理的ですぐガトリングガンを発射する『こち亀ボルボ西郷な危ない刺客。弾が散乱して掃除が大変という生活感も同じミリタリーギャグ感。

最初冷静なときの声とその容姿から漂うあどけなさのミスマッチが不思議。

機械学習してスマホアプリ(!)に進化を遂げたら超かわいいアイドルそのままになる当時の環奈イメージ炸裂感。絶対領域サービスが希少だぞ。

そんな感じだけど教室の後ろの方に鎮座してほとんど本筋に絡まない起用は『かぐや様』の浅川梨奈以上に低待遇な感じに隔世の感。

コスプレアシスタントは将来を予感させるよね。(広告だろ)

冷静なときの演技は今後開く能力の片鱗が見え隠れしている気がして興味深いよ。

適度な盛り上がりと面白さ “実写化品評会”を超えた娯楽映画

ファンタジーアクションゲームのようなワクワク感、スリリングな展開。クライマックスでの適度な盛り上がり。奇抜なキャラのインパクトと一貫したテーマ性。世相も盛り込むけどそこに安住しないオリジナリティ。

原作漫画もアニメ版も未見な筆者が観て見応えあると感じた。

漫画実写化というとどうしてもキャラの再現度合いを中心としたファン同士の“実写化品評会”止まりになりがちだが、単体の娯楽映画として成り立っている。実写化としては上質ということだ。俳優が若いのはともかくあまり古さを感じさせない。

殺せんせーを始めとするCGの造りは非常に丁寧で(もちろん実在する感じは全くしないけれど)現実空間でリアル俳優の動きと違和感なく噛み合っているからすごい。

普通の少年が世界の危機を救う構図はありきたりだけど、タイトルに代表されるように「暗殺」と「教室」の組み合わせはやはり斬新。アニメのダイナミックな表現と実写ならではの臨場感のいいとこ取り。

中学生くらいの子たちが引っかかる要素で身近なところからスタートする冒険。

ひ弱な少年潮田渚(山田涼介)が大柄な人物に対峙する描写なんか戦術の極意みたいな意表つく展開が見ていてすっきりする。

終盤のカタルシスも『ぼくらの七日間戦争』(1988年)みたいな弱い者が知恵と工夫で勝つみたいな痛快さ。今の時代にたとえライトであってもゲリラ革命っぽさを描けるのはちょっと頼もしい。

独特な言い回しの殺せんせーの声はニノがやっていたと知って感服した。並の声優よりすごいわ。

【4.0】

暗殺教室

暗殺教室

  • 山田涼介
Amazon

作品データ・視聴情報

映画暗殺教室
種別 映画
製作国・公開年 日本 2015年
年齢制限(日本) G(なし)
出演 山田涼介、菅田将暉山本舞香竹富聖花優希美青、上原実矩、橋本環奈
監督 羽住英一郎
現在観る方法 配信、DVD等