かんな座

“俳優橋本環奈”と映画・ドラマの味わい方

トクメイ! 第1・2・3話 - 橋本環奈 宿命の警察ドラマ

トクメイ!警視庁特別会計係
トクメイ!警視庁特別会計

橋本環奈主演の“警察とお金”をテーマにした異色エンタメドラマは、違うところを“削減”しているかもしれないと感じた件。宿命を背負う作品の序盤丸ごとレビュー。

イントロ

緊縮財政を強いられた警察組織は、かねて警視庁のお荷物所轄と呼ばれる万町署で、捜査費などにメスを入れる“経費削減”テストを行うことを決めた。そんな経費削減の“特別命令(トクメイ)”を背負って本庁から派遣された特別会計係の女性警察官・一円(橋本環奈)だったが、そこで待ち受けていたのは無駄な器物破損やいかがわしい情報屋との交流、使途不明な経費などがまかり通ってきた所轄署のひと癖もふた癖もある個性豊かな刑事たち。「捜査に金は必要だ!」と話す刑事たちと、時にぶつかり合い時に協力して、次々と起こる事件を解決へと導く新しい警察エンターテインメント!(公式より)

経費削減しているのはドラマ作りの方?

“警察とお金”という斬新なテーマを投入しておきながら、物語の芯が「経費削減」しかないのではあまりに地味で深みもなく、お堅い組織を巻き込んだゴタゴタならやり方次第で面白く作れるはずなのに作り手側の「見せたいもの」に大したものがないためか、はたまた序盤で出し惜しみしているのか内容の密度が低く、物語の経費削減の前に「番組作りのお金と労力をケチってない?」という感じが拭えない。

要するにスカスカな感じ。

環奈の警察ドラマというとどうしても『警視庁いきもの係』(2017年7月期)と比べられてしまう宿命にある。『いきもの係』は、動物オタク(キャラ)+動物ミステリ(本筋)+警察コメディ(演出)という芯がしっかりしていたから、少々ツッコミどころのある映像作りや設定、環奈の発展途上な演技であっても補って余りある出来映えとなっていた。

組織ドラマ、変わり者キャラのコメディ、刑事ドラマのどれにもなりきれない中途半端な仕上がりになってしまっている。

環奈が演じる主役・一円はじめ・まどかがお金にうるさい故の“能力”を活かして事件解決を導いていくのは見てみたくなる要素ではあるが、第1話を除いて犯人や危険を前にしても緊張感のないコメディタッチな描き方、ハートフルなまとめ方をされては、観ている方は何を楽しめばよいのか分からない。

キャラの使い方もそう。ある状況の中に変わり者を投入すればいい具合で違和感が生まれ、コメディになるのだろうけど、(第1話はともかく)わずか3つくらいしかないシュチュエーションで進行する本作では、キャラ同士のやり取りが主になってくる。

そうなると掛け合いとかセリフ回しに妙味がないといけなくなるが、それがない。普通のぶつかり合い。「口うるさい姑」的ポジションを環奈が迷いなく演じているだけにこれは一から企画をやり直してほしい気が湧いてきた。

第3話は意表を突かれる巧みな展開ではあったけど、なんというか魂が感じられない映像に呆然としてしまう。このドラマから感じる空疎な雰囲気の大元は、「表現したい何か」と「描くためのセンス」の欠如なのではないか、と現段階で思っている。オープニングで数々の名作をパクる節操の無さにもそれがよく現れている。

今後、シリーズを通した謎である「脅迫者X」の正体とそれにまつわる展開への期待、そして“隠し玉”があるならさっさと出して本領発揮してくれという思いしかない。

沢村一樹の昔の刑事風キャラ、松本まりかのサバサバ強気の役、そして佐藤二朗の包容力のある上司の役は良いんだよ。

繰り返しになるけど環奈も役作りに迷いがなくなり、オーバー気味の演技もある役がマッチしている。強いて課題を上げれば「熟す」ことかな。本当に上手くなったけどまだ煮込みが必要。心配はしていない。

暫定3.0】ダメというより見応えが弱い

作品データ・視聴情報

トクメイ!警視庁特別会計
種別 連続テレビドラマ(フジ系)
製作国・放送年 日本 2023年 (2023年10月16日 - 12月)
出演 橋本環奈/沢村一樹松本まりか/JP/前田拳太郎/結城モエ福井晶一/米本学仁/前野えま/安藤嗣海/徳重聡鶴見辰吾佐藤二朗
演出 城宝秀則/光野道夫/河野圭太