シリーズ中盤を迎え脚本・演出的にも本腰入れてきた(?)。なんとか刑事警察ドラマが温まってきた橋本環奈主演の本作は、それでも何かが足りない。
第4話 - 第6話の一言レビュー
【第4話】描こうとする内容こそ社会派ドラマ的で良いのだが序盤の盛り上がりに欠け、山場もあっさり終わる展開がなんとも見応え弱く感じる。環奈の振り切った感情表現は良いけど…全体に噛み合っていないかな。
【第5話】シリアス演技がやはり似合う環奈の一円と『相棒』青木役でおなじみクセ強俳優・浅利陽介の演技合戦で一歩も引けを取らない環奈が頼もしい。負の感情の微妙な表現の匙加減がほんとに良い。よくある「組織の暗部」を描いた展開でわかりやすい下剋上物語ではあるものの胸のすくラスト。
【第6話】やっと起こった刑事ドラマ的展開。主役の生命の危機という切迫した状況にも関わらず刺激は弱めだが、ほのぼの要素を盛り込んだ「作戦」はユニークでファミリー向けドラマとしてのストーリー完成度は高く、アクション込みで退屈しない。
第2話から第4話までだと「『トクメイ!』を毎週観ています」とはとても他人に言えないレベルだったけど、第5話・第6話でとりあえず及第点はクリアしてきた感じだ。
何か足りない感じ3つ目の正体とは?
でもなんだろう第1話から引きずっているこの作品の何かが足りない感じは。
前回レビューでも書いたけど、やはり(1)企画、(2)キャラ造形の問題は大きい。
経費節減というテーマは、時代にマッチしているかもしれないが、やはり地味すぎるし、それ故にか一円という節約キャラにいまいち魅力を感じることができない。
他の役者が務めれば良かったかと考えると、『王様に捧ぐ薬指』は申し訳ないけど他に適任者がいたはずだが、本作は多分他の20代女性俳優が一をやっても足りない感じは埋まらない気がするから、大方1と2の問題であって、環奈の演技や脚本のせいではないと思う。
その上での話だけど、環奈の演技にも3番目の理由が潜んでいることがわかった。第6話が比較的良回だったからこそ見えてきた「問題」。それは何か。
それは本作での環奈ちゃんは、“足し算の演技”なのよね。テクニックで要素を足して演じるタイプの演技。どちらかといえばの話だけど。
反対に元々自身が抱えている要素を生かすのが引き算の演技。環奈は割と後者でうまくいっていたタイプ。(引き算したら特異なものが残るから唯一無二なのよ。)
企画とキャラ造形(設定)がそもそも甘い中、演技テクニックのみでキャラを立たせていくのは相当引き出しが多い役者でないと難しいと思うんだ。
そんな無理ゲーに挑んでいながら演技的な綻びを一切見せていない環奈もすごいんだが(プロを褒めてもしょうがないけど)、やはり歯車の噛み合わせはなんとなく悪い。例えるならば、〈化学調味料しか使っていない料理〉のようになる。
だから、うまいけど惹かれない。
多分、それが「足りない感じ」の3番目の正体だと思う。
【ここまで3.0】第6話のみ単体3.5
まあ、俳優・橋本環奈の試練と受け止めることもできる作品かな。
作品データ・視聴情報
トクメイ!警視庁特別会計係 | |
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種別 | 連続テレビドラマ(フジ系) |
製作国・放送年 | 日本 2023年 (2023年10月16日 - 12月) |
出演 | 橋本環奈/沢村一樹/松本まりか/JP/前田拳太郎/結城モエ/福井晶一/米本学仁/前野えま/安藤嗣海/徳重聡/鶴見辰吾/佐藤二朗 |
演出 | 城宝秀則/光野道夫/河野圭太 |