かんな座

“俳優橋本環奈”と映画・ドラマの味わい方

ルパンの娘第7・8話+SP - 橋本環奈の強烈演技見逃すな

ルパンの娘
ルパンの娘
深田恭子超異色の覚悟。全面対決にふさわしい強敵登場で最後まで魅せる。橋本環奈の“人を殺す覚悟のリアルな表情”再び。

第7話ガイド&ツッコミ

静かにLを追い詰める環奈の美雲

探偵一家のLの一族に関する調査資料は盗られたが、「肉を切らせて骨を断つ」。Lを泳がせてアジトを付け止め、一気に仕留めるつもりの美雲(橋本環奈)。殺意を内に秘めつつ記憶消されたフリをしてしれっと刑事を続ける。和馬瀬戸康史)への恋心を断ち切って…本当に?

そんな危機をよそにあん(小畑乃々)の学校では学芸会でLを題材にした“実録”ドラマ「Lの一族」の劇を演じることになってしまった。

巷では「Lの一族」を騙る者による金塊強奪殺人事件まで発生。 もう面倒な出来事だらけのL界隈。

毎度お馴染みのミュージカルシーンは仇役美雲が参加させられるまさかの内容。おいおいキャラ崩れるだろ。美雲というより環奈のかわいい&キレダンスにキャリアがのぞくファン感状態。

いや、結構筋通っていて歌のおにいさん円城寺あきら(大貫勇輔)は意外な能力を発揮?

それも虚しくついにLのアジト(自宅)が美雲に突き止められてしまう。

美雲に追い詰められたL 深まる謎

前回の激しい態度はどこへやら。今度は至って冷静に刑事の立場も利用してLに迫る美雲。刑事美雲になりきる環奈の低めで落ち着いた声のトーン。本当に様になっている。

たける渡部篤郎)は時間を稼ぐが、そのスキルがルパン三世。特殊メイクはちょっと甘いけど。 もうこの家は無理だ。逃亡、しばしの別れ。杏のために苦渋の選択をするしかない深田恭子)・和馬夫婦。杏が振り向けばマルシア

この災難の根本原因に嫌でも目が向き涙する華に尊は親心あふれる言葉をかける。

一方、家族愛からある決意を固めたらしい和馬は美雲から逃げずに向き合うことにしたが…。ミステリとしても深まる展開。

環奈のもう信頼関係が崩れた和馬を静かに突っぱねる態度とセリフにしっかり感情が乗っかっていて、怖いよ。いろいろな状況を演じられるかという意味では申し分ないレベルでしょ?、この人。 瀬戸くんにしても環奈にしても関係性の度合いを踏まえた細かい演技の調節がうまいよなあ。

待ち受ける残酷な運命

追い討ちをかけるようにある重大な欠陥が発覚して追い詰められるL。なぜか落ちついた態度を見せる尊。

偽物Lは何者なんだ?

はめられる和馬、いや美雲も。

慌てている時はミスりやすいを地で行く華。このミスが一番辛い。

守ってきたものが全て壊される残酷な運命のいたずら。

ひねる展開に目が離せなくなった。

絶体絶命のまま最終盤へ行くぞー。

第8話ガイド&ツッコミ

盗むことで守る!深キョン華の覚悟

和馬は敵のナイフをまともにくらい生死をさまよう。

Lの一族も杏にバレた。

偽物LはLの一族を見つけるのに躍起になっている。

同じ頃、Lが成敗したやつらの記憶が戻り、「Lは生きていた」と巷で騒動になっていた。

偽物Lを成敗し、その宝をも奪ってやる。

逃げないと決めた尊は、とっておきの秘策を実行に移す。

「盗むことで守る」決意(!)を固めた華は尊らと行動を共にする。

何かが変わり始めた美雲だが…

探偵刑事美雲の家に現れ、美雲の父の名探偵・宗真伊吹吾郎)が死んだ真相を伝える尊とその父・麿赤兒)。受け入れ難い美雲。麿の佇まいは環奈オーラも軽く吹き飛ぶようなすごみがあるなあ。

一方、泥棒一家であることを知った杏は取り乱すが、三途の川にまで現れた円城寺の歌を聴いて(笑)一命を取り留めた和馬にかつて華も同じ境遇で苦しんでいたと諭される。

美雲は復讐に心を支配されていたが、和馬との出会いで変わり始めた胸中を告白する。この時和馬は何かに勘付いた。

偽物L軍団と全面対決 意外な味方も参戦

敵の敵は味方?うまいこと偽物Lを誘き寄せた本物Lたちには味方がいた。それは美雲、毎回登場していたスパイロボット「てんとう虫」のバージョンアップ版、それに傷ついた和馬がどこで聞いたか仮面ライダーじゃなかった祖父・和一藤岡弘、)の協力で駆けつける。

華の正直な告白の手紙に母のやさしさを受け止めた杏は、元自宅=Lのアジトに戻るけど誰もいない。そこで見たのは華らLの一族が偽物Lに捕まっている様子が映し出された画面だった。

ラスボスにふさわしい最強の敵、集団アクション。絶体絶命の危機。美雲の怨み、ある人物の覚醒。筆者の元近所のロケ地(知らんがな)。そして北条家がつかんだLの本当の秘密とは?

コナン君ばりに腕時計型武器を駆使する環奈美雲が最後に短刀を振り下ろす!一瞬つばを飲み込んで殺人の覚悟を決める表情が再び。特撮ヒーローみたいなファンタジーなのに最後まで美雲の復讐心を描き続けたのは現実感があって良い。

スリリングな展開乗り越え、最後は映画見終わった時のような放心状態が待っている。最終話は今ひとつ盛り上がらない連続ドラマもある中、この実質的最終話は意外と見応えあったわ。

-愛の物語-ガイド&ツッコミ

放送9回目、今シリーズの後日談。第8話まで観続けて好きになってしまったLファンのツボを押さえているのがにくいサービス回。

えっ?ミュージカルおにいさんと華が結婚?

激しい闘いの末、再び平穏で幸せな日々が訪れてきたことの喜びを噛み締める華。

一方、尊は美雲のボロアパートを訪問し、協力を依頼する。“もう一人のL”を探すため、わざと逃した偽物L幹部の居所をつかむためだった。

歌のおにいさん円城寺が唐突に華の元へお願いごとをしにやってくる。なんでも父・市村正親)が久々に来日するので一時的に婚約者のフリをして欲しいと。そんな無茶な。だが、夫の和馬でさえ「聞かない方がいい」とまでいうある秘密が絡んでいてやるはめになってしまうハーレクイン風ロマンスな展開は序の口。

超高級リングを先に盗んで華を奪え?

円城寺と華は幼馴染。子どもの時から華麗な身のこなしの円城寺は華に結婚を申し込んだことあり、相手を思いやる愛ゆえに身を引いた過去があった。

円城寺の父・豪は華の素性くらい調べはついており、本当にほしいものはその手で盗み取るのだと円城寺を奮い立たせる。華を奪い取れ。円城寺家もまたLの一族=三雲家と同じ大泥棒一家なのだ。

尊が話をつけにいくが、円城寺が華の許嫁だった(本当か?)ことから「泥棒合戦」をやることに。Lが負ければ円城寺と結婚、Lが勝てばその件はなくなる。

こうしてLの一族と円城寺の《第1回どちらが先にグレース公妃と同じカルティエダイヤモンドリングを盗み出すか対決》が決定。“お宝不足”から悦子小沢真珠)が欲しがっていた超高級品だ。

その頃、美雲は自宅でスパイロボット「てんとう虫」を発見。「いつも見守る」と栗原類)が就寝中も監視していたことを知って気持ち悪がる。

この後美雲のとった“丁寧な塩対応”がどこかの通販会社の皮肉になっていて笑える。

ダンスは泥棒必修?華麗に舞う円城寺が最高におかしい

円城寺は本気で挑んで華を奪うと宣言している。トラップや敵の攻撃を軽々とかわす身体の動きには敵わない。Lにも誰かいないのか。美雲に速攻フラれた渉は傷心状態でフリーズ中。尊、悦子、マツ(どんぐり)だけでは勝てないかも知れない。

杏には教育上やらせるわけにはいかないし…。

こうしてまたしても泥棒やらざるを得ない状況に追い込まれた華。脚本の意地悪に翻弄される視聴者本位な展開が実にいい。

お宝の現場。

円城寺は人感センサーに反応して自動で連射される銃弾をキレの良いダンスで華麗に避ける。

華麗に舞えば舞うほど、真剣であればあるほど滑稽になる不思議。

華麗なダンスは忍びのテクニックになるのか!プロを使った高度なお遊びがバカバカしくて最高。

先にお宝にたどり着いた円城寺。さあ、どうする華。

今回ばかりは映えるミュージカルシーン。大物連れてくればスケールも大きい。

“もう一つのLの一族”の手がかりを見つけ出した美雲。華の重大な秘密とは?。

映画への橋渡しになる要素を余韻に残してシリアスに締めくくられる。

シリーズ完走まとめ

環奈の幅広い腕前がよくわかる作品

このドラマ、環奈の現時点での幅広い腕前を《シリアス寄りで》披露するものになっていて、“役者環奈カタログ”が見事更新された感じだ。脇役起用だからあまり期待していなかったけど、名実ともに3番手としての役目を果たし、存在感も存分に発揮していて並の主演作よりも環奈が生かされている作品となっている。

強烈な怒りの表現を始めとする元々得意な演技からシリアスめの演技や殺陣など俳優本格進出後5年間で蓄えてきた様々な要素に加えさりげない大人の色気など今なら出せる要素まで引っ張り出されていて、その品質も申し分なくなっている。なおかつ持ち前の美貌や清楚でどこか普通っぽくない雰囲気も生かした役柄になっており、本当に橋本環奈の使い方がよくわかっているとしかいいようがない。

驚かされた人も多いのではないか。

ハマると癖になる独特の味わい

仮面舞踏会みたいな仮面をつけ全身タイツみたいなスーツ着てどこかで聴いたような雰囲気のテーマ曲に乗せて妖しげに踊る。そして決めポーズ。なんだこの世界はと思った変身シーン。第1話を乗り越えて観続けると生まれてくる「もっと観たい」。癖になるのだ。

ベタなダークヒーローものなんて、懲らしめ系なんて…。この物語世界の独特な空気には常習性がある。現実ベースで少しファンタジーな物語を楽しめる人=この世界に入れた層は第8話までしっかり完走できると思う。よくある最終回手前がピークではなくて最後まできっちり観せてくる波乱な展開。

よくよく観るとストーリーが巧みで演出が細かい。複数の異なる軸の交わりとか随所に散りばめられた伏線の回収など丁寧に作っている感じがする。物語が進んで辻褄が合っていくところは謎解きもののような爽快感もある。杏の服や持道具には「てんとう虫」モチーフの画が多いなどいちいち芸が細かい。

【3.5】

作品データ・視聴情報

ルパンの娘
種別 テレビドラマ(フジ系)
製作国・公開年 日本 2020年 (2020年10月-12月期)
出演 深田恭子瀬戸康史、橋本環奈、渡部篤郎
監督 武内英樹、洞功二 他
現在観る方法 配信(FOD)、Blu-ray、DVD