かんな座

“俳優橋本環奈”と映画・ドラマの味わい方

インフルエンス第4話+最終話 - 意表突く展開に卒倒しそう

インフルエンス相関図
インフルエンス相関図
二転三転当たり前の意表突きまくる展開。「絶対にしてはいけないことをして相手を守る」友情関係に変化が訪れる(?)。なぜできる橋本環奈の普通じゃない感情表現。

第4話ガイド(ツッコめない!)

利用される友梨の純粋友情

依頼されたとはいえ凶悪犯罪を実行してしまった友梨ゆり(橋本環奈)は、始めに聞かされていた話と違うことがわかって動揺する。その一方で冷静に真相を確かめようと動き出す。

犯罪行為の結果よりも友人関係に亀裂が生じたことのショックが大きい友梨。どう考えても普通じゃない。

追い打ちをかけるように周辺関係に現れる意外すぎる現象。

並の人間では思いつかないようなストーリー展開に卒倒しそう。

そうした中、里子さとこ吉川愛)が唐突に会いに来て明かされる心境とある告白。

真相を確かめる中で知らなくてもいいことまで知ってしまう友梨。

大人になった3人の変化する“三角関係”。

利用される(?)友梨の友情。

友梨がたどり着いた「真実」とは?。

この先どういう人生が待っているのか?。

回想する中年「友梨」の謎までが加わって引っ掻き回される46分。

最終話ガイド(ツッコめない!)

友のためだったのに…全てが裏目に出る

友を助けるためだったはず。でも違った。深く思いつめた友梨は、実家に電話をして理由も言わず「ごめんね」と謝る。

その後、浴室に入って浴槽に水を入れ始め、買ってきたナイフを開けようとする。全てを終わらせようと。

その時、友と過ごした日々が走馬灯のように脳裏を駆け巡り、泣き崩れてしまい何もすることができなかった。

ある時夏目白洲迅)が投げかけてくれた言葉を思い出した友梨は、ある決意を固める。その動機もまた、どんなに利用されても変わることのない強すぎる友情だったのだ。

さらにひねる展開。

頭しっかりついていかないと混乱必至。

裏目に出る今までの行動。さらなる悲劇。

友梨は…。

全話完走まとめ

すごすぎる“小説”に本気で脱帽

率直に言って面白い。

意表を突きまくる展開。二転三転当たり前の引っ掻き回される約250分。

随所に散らばる伏線を見事に回収。恐ろしいほど巧みな筋立てに本気で脱帽する。

何よりも友情を重んじる友梨ら女3人の独特で繊細な心理によって引き起こされる凶悪犯罪という並の人間には到底思いつかないような設定と展開に言葉を呑む。

すごすぎる“小説”だとしか言いようがない。

関係性の連鎖、奇妙な偶然の連続は何を意味するのか。結末へ向けてドキドキしながら次のページをめくる気分が味わえる。

それから緊張感誘うカメラワーク。

殺人を実行しようとする場面では、手持ちのカメラで歩いて付いていくような感じがまるで透明人間なって背後から殺人を目撃させられるような画になっている。

嘘っぽい血糊だけはなんとかならなかったのかとは思うものの“善人”が刃物を突き立てる瞬間に思わず震撼してしまう。

「絶対にしてはいけないことをして相手を守る」のが物語のベースではあるけど、結果的にそれ自体を問う展開になってくる。「因果応報」的非情な展開も含ませつつ。

全ては友情・関わり。相手を思う気持ち。

どんなに利用されても騙されても友に対する情が何よりも優先される。

究極の状況下でも貫かれる強ーい友情。

レズビアンの愛情でもなく、単なる遊び仲間の居心地の良さでもなく、相手を配慮しすぎる3人の思いが強すぎる三角友情の空気感は、本作でしか味わえない独特な手触り。

配慮しずぎて、思いが先走りすぎて、超おせっかい。 一言で言えば「共依存」のような3人。

人間関係で苦しめられた3人が人間関係がきっかけで過ちを犯し、最後は…。

比喩的なラストの描き方は、社会で何らかの苦労を味わった人間にとっての儚い理想郷のようで筆者の琴線に触れまくり。

すまん、批評になってないよな。

エンディングテーマ曲がこんなに心に染み入ることは中々ないなと。

友梨はもっと違った生き方ができたんじゃないかと切なくなるよ。

物語的には「女性は弱い立場だけど」「手を携えあう」「困難にも打ち勝って」「本当の幸せを見つける」といったような“健気な女性”を描く昼ドラ的雰囲気に納得行かない気持ちもなくはないけど、昼ドラのようにちょっとずつ進む展開にやきもきさせられることもなく映画2本分の時間で全話味わうことができる。

なぜできる?環奈の普通じゃない感情の表現

特殊な状況下における主人公の心理を橋本環奈が見事に再現している。普通じゃない感情の表現がどうしてできるのか。今まで以上に表現に磨きがかかっていて筆者みたいな定点観察者でさえ驚きを隠せない。

最終話、浴室の場面なんて友梨独特の心理をなんともいえない重苦しく沈んだ目で表現していて、しかも目の表情だけ切り抜くようなショット。わかっていてこういう演出。

展開的にかなりやばいところなので真に迫るというよりもその上をいくような感じに観ていて怖くなったわ。

筆者のPCの横には「洋服の青山」のクリアファイルがあって思わず見比べたけど、広告で見せる愛らしい環奈ちゃんはどこにもいなくて。

主役で善人役で凶悪犯罪。環奈ぐらいの年齢の主演級俳優ではなかなかやらないんじゃないかと思う。

ネタバレ一歩手前なので書きにくいけど役としては大団円を迎えない。『さくら』(1994年)みたいな終わり方なのよ。

まあ、環奈なら引き受けるだろうなあとは思うけど、立場を考えると大方驚くこと間違いなしの役どころ。

いずれにせよ環奈の歴史に重要な1ぺージを刻んだ作品であることは間違いない。

地上波では絶対ムリな作品。ぜひ観てほしい。

見応えたっぷりの良作。

【4.5】

作品データ・視聴情報

インフルエンス
種別 連続テレビドラマ(WOWOW) ※全5話
製作国・公開年 日本 2021年 (2021年3月20日 - 4月17日 『連続ドラマW』)
出演 橋本環奈、葵わかな吉川愛白洲迅宮近海斗Travis Japan/ジャニーズJr.)、大塚寧々、鈴木保奈美
監督 水田成英(他)
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