橋本環奈の勝ち気上から目線猫目キャラの心の声が強烈。気だるい誘いはクセになるかも。超大金持ち令嬢と生徒会長の「恋愛頭脳戦」とすれ違いがおかしい異色ラブコメディ?青春ラブストーリー?は予告編を絶対観たらダメ。
オチを先に言うな
予告編でオチを言ってしまっていること。本作の一番ダメな点はこれに尽きる。それがどんなにくだらなくても、ミステリでないにしても製作側が絶対にネタバレしてはいけない。
コントでオチを宣伝に使うか?知られた古典落語でもまさか演者が最初にオチを言うわけがない。展開がわからないから、あるいは知らないふりをしてその世界に入り込むことで流れを楽しめるというものじゃないか。
オチがどんなにバカバカしくても役者が真剣に演じるほどその落差で笑えるのだ。笑える仕掛けには細心の注意を払わねばならないのに自らネタバレなんてどうかしている。タイトルで結末を言い切っちゃっている『チア☆ダン-女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話-』に勝るとも劣らないTBSと河合監督のネタ殺しには呆れる。
平野紫耀も橋本環奈も真剣に演じているけどオチがわかっているから今ひとつ入り込めず鑑賞していて落ち着かなかったよ。
チグハグ感に少し居心地悪くなる
花火大会のシーンがどうにもしょぼいことを除けば一つ一つの画はよくできていると思うし、エロシーンを含めて無駄なシーンはなく、紫耀くん、環奈らの演技もうまいので「まあなんとかなっている」完成度ではある。だが、アニメを多用したデフォルメ妄想シーンやふざけ気味のナレーションなどにぎやかで漫画チックな映像に落ち着いた普通のドラマっぽい映像も出てくるから統一感がなく、個性強いドタバタラブコメからいつの間にか王道青春ラブストーリーみたいな真剣なドラマにスライドしていたり、画的にも展開的にも今一つチグハグな感じが拭えなくて少し居心地悪いの。どこに照準合わせて楽しめばいいやら。
「愛を告白したほうが負け」「いかに相手に告白させるか」といった「恋愛頭脳戦」的策略を尽くしながら関係が進展したり拗れたりする描写なら笑えもし、展開によっては感動するかもしれないけど(前半の映画館のシーンあたりまではまあいいが)、中盤になると「頭脳戦」ほぼなしで普通の青春ラブストーリーみたいに展開してしまう。
クライマックスなんて青臭いミュージカルもいいところ。奥手だった二人のプライドの壁が壊れて感情を露わにするところも“青春もの”そのもので序盤の雰囲気と違いすぎる(熱演ぶりは褒めるが)。そこでやっと二人の本性が明かされるんだけど、それに関するコメディ描写はもはや後出しすぎて笑えないんだな。
そんな感じなので先程のネタバレの件も相まって物語世界に没入させるという点ではもうちょっとなんだな。
映像をつくる力量はあるけどセンスがない。
もしかしたら監督自身の“本当に見せたいもの”が定まっていないのかもしれない。他の人気コメディを表層だけ模倣してもセンスまではコピーできないから。
橋本環奈のお嬢様役は本当にダメなのか?
「環奈が上流階級の令嬢に見えない」という評を見かけていたので“点検目線”でも観ていたけど、浴衣プールのシーンだけはそう見えないのは確か。でも、この理由はすぐにわかった。そもそも環奈は今までの実写化キャラがそうであるように内面から醸し出される雰囲気で魅せているのではなく、百面相気味の多彩な表情を始めとする独自のキャラ再現力ともいうべきテクニックで漫画キャラを再現しているためで、体張ったシーンになるとそれが通用せず“本人”が出てしまうからなのだ。
だから、「そう見える」「そう見える演技を確実に捉える」よう演出側がきちんと配慮しないといけない。そもそも“現実にいないぶっ飛んだキャラ”をつくるんだから。もちろん環奈の課題もゼロではないけど。
心の声が強烈 勝ち気猫目が刺激的
環奈演じる四宮かぐやは、心の声を発する時の表情、勝ち気で上から目線の猫目が最高にいい。原作にはないらしいからキャラをよりリアルにした点ですばらしい。そのセリフや雰囲気は『斉木楠雄のΨ難』の照橋心美を青年誌に持ってくるとこんな感じみたいな感じ。
陰険なモノローグが二人のハスキーボイスで交錯する心理戦が無駄に知恵を使いすぎていて相当バカバカしい。
脱出のシーンはとてもいきいきしていて環奈本人の豪快な性格に合っている気がする。このコミカルなアクションをスタントなしでやっていたら結構すごいことだよね。
まさかの下ネタ参戦で下半身が熱く
序盤のドタバタではまさかの下ネタ。童貞いじり(ただし平野紫耀演じる白銀御行の妄想)、チンチンネタに加えて、極めつきは自宅ベッド。二の腕ぷるんな気だるい環奈の誘いはクセになるかも。「相手の名前」を言いながら荒い息づかいでうなっているシーンが“やっている”みたいに見えるぞ〈一般サイトなので詳しい説明は省くが〉。
後の『シグナル100』(2020年)のエロシーンに環奈は関与していないので今のところピークかもしれない貴重さ。これは本当にセックスシーンやったらうまいんじゃないの?と思わせるくらい下半身が熱くなる。
かぐや様は買わせたい
※現在配信あり2019年9月公開されるも「この手の作品は正直映画館で観づらいなあ」と思う筆者にとって配信を待つしかなかったが、2020年3月に日本でBlu-ray、DVDが出るだけで知る限りネット動画配信はなし。後はWOWOWでやるくらい。
日本においてBlu-ray、DVDのレンタルはあるが、配信なし作品のためいつも「貸出中」だった。公開から鑑賞まで1年を要した理由がそこにある。もう買っちゃったよ、Blu-ray。
そんな観るハードルが高い作品。斬新な設定に加え、コメディで俳優としての地位を一段上げた環奈の起用だったら当然期待値が高くなるわけだけど、「本当は何をしたいのか」が曖昧な作品になっていて残念だった。
紫耀くんと環奈が駆け引きモノローグドタバタラブコメと真剣なラブストーリーを演じているだけにネットで広く観られてもっと批評される必要がある。そろそろ中国本土で公開なんだって?レビューが積み重なるといいよね。
【3.0】
作品データ・視聴情報
かぐや様は告らせたい -天才たちの恋愛頭脳戦- | |
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種別 | 映画 |
製作国・公開年 | 日本 2019年 |
年齢制限(日本) | G(なし) |
出演 | 平野紫耀(King & Prince)、橋本環奈、佐野勇斗、池間夏海、浅川梨奈 |
監督 | 河合勇人 |
現在観る方法 | 配信、Blu-ray、DVD |