もしかして化けるかも。そう予感させる演技の箇所が一ヶ所以上あり、そこを観るためだけでも価値がある。環奈の「性能」を引き出した最初の作品。映画『セーラー服と機関銃 -卒業-』。
「どうせアイドルでしょ?」の先入観をぶち壊す
Twitterでcdb(@C4Dbeginner)さんがすでに言及しているが、人を殺そうとする時の表情。
「橋本環奈さん、それ本当にヤクザが人を撃つ時に腹をくくる時の演技ですやん」っていうね。橋本環奈の演技が頭いいのは「オラァ」とか「なんじゃワレェ」とかは一切言わない。「法律に守られた女子高生がどういう態度を取るとヤクザが困るか」をよく知ってる演技をしてる。なぜ知ってるのかは謎です。
— cdb (@C4Dbeginner) 2016年3月12日
まさか経験あり?とさえ思わせる妙にリアルな顔の演技。愛する人を撃とうとする時の愛憎入り交じりつつも覚悟を決める表情がうまい。本当に人が人を殺す時はこういう表情するのではないだろうか。
撮影当時16歳。しかも肩書きが「アイドル」で「俳優(女優)」ですらない。正直言って彼女には先入観があったからその規格外の演技に心底驚かされた。ここを見落としている“環奈評論家”があまりに多すぎる。
環奈の物怖じしない佇まい。綺麗な顔してヤクザと堂々と対峙する。機関銃で襲撃する時の目が怖い。普通じゃないオーラが漂う。
こうした点は将来大化けする可能性を感じさせるに十分すぎる。
抗争シーンも体当たりで挑んでいて、立ち振る舞いは堂々としている。先程のcdbさんが準える『極道の妻たち』は言い得て妙だ。
一方で子分の死に直面した時カタギの性格が出てきて動揺したり、失礼ながらいつもの明るい環奈ちゃんからは想像も付かない芝居が出てくる。彼女は本当にローカルアイドル出身なのかと。
環奈の魅力と可能性が詰まっている
また、役とはいえラブホテルではしゃぐなど大先輩アイドルですら躊躇してたような種類のシーンでもどこか遠慮がない。そして、セーラー服がものすごく似合う。これ結構大事な点。
全体としてまだ荒削りなのはそれはキャリア的に当然であって、意図せずともアイドルの頂点を極めた彼女がここまで本気でやる凄み、人間としての振れ幅の大きさこそが何よりも見どころなのだと思う。
普通の演技なら演技派の役者に任せておけばよく、環奈にしかできない役がありそうだ。
こんな清純派美少女だから淑やかそうに見られがちだけど、「態度がでかい」と自認している本人の性格もあってか小柄だけど強気で堂々とした(かつ普通のシーンでは普通に可愛い)JK組長という独特な雰囲気が出ている。バットで襲撃するシーンは多分環奈本人が楽しんでいる。
脇を固める役者も本気だし、抗争シーンも映像的にしっかり作っていることもあって物語世界に引き込まれた。作品としても荒唐無稽な話になり過ぎない絶妙なバランス感覚の佳作。
【3.5】
作品データ・視聴情報
セーラー服と機関銃 -卒業- | |
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種別 | 映画 |
製作国・公開年 | 日本 2016年 |
年齢制限(日本) | PG12 |
出演 | 橋本環奈、長谷川博己、安藤政信 |
監督 | 前田弘二 |
現在観る方法 | 配信・DVD等 |
未来を知ってからの書き直しはずるいかも知れないが、当時思ったことのみをベースに再構成しました。日付は別サイトで最初に投稿された日付です。